海外FX会社では、同じ通貨ペアで売りポジションと買いポジションを両方保有する、両建て取引を禁止するケースがあります。
両建て取引を禁止とするのは、一体どんな理由でしょうか。
この記事では、両建て取引のメリットとデメリットも含め解説をします。
両建てを考えるケースは3種類
同じ通貨ペアの売り・買い両方のポジションを持つ両建てを考える上で、
以下の3つのケースが考えられます。
同じFX会社内で複数口座の間
異なるFX会社の間
それぞれのケースによって、
トレーダー及び海外FX会社にとっての利益・不利益となる内容が異なってきます。
ある1つのケースにおいては、一般的に両建て禁止としていないものもあれば、
一方のケースにおいては禁止にしているFX会社が多いといった対応の違いがみられます。
すべての両建てが禁止となっているのではなく、
特定の条件により実施される両建てのケースを考慮しなければならないことを理解しましょう。
同じ口座内での両建て
同じ口座内で両建てのポジション保有は、最も一般的な両建ての形式です。
同じ口座内での両建てとは?
一つのFX会社の
同じ口座で同じ通貨ペアの買い・売り両方のポジションを持つこと
この形式の両建てを禁止している会社は、
国内FX会社・海外FX会社問わずほとんどありません。
ただ、両建てのポジションを持つ取引をするのかどうか、最初に設定を求めてくる会社が多くなっています。
両建て取引は、理解せず実行することで不利益を被る可能性があるため、事前の確認を行なう会社が多くなっています。
同じ口座内なら、戦略として両建てを利用するトレーダーも多いです。
同じFX会社内で複数口座間の両建て
FX会社によって対応の可否が異なりますが、
1つのFX会社の中で複数の取引口座を保有できるケースがあります。
特に海外の方で増加傾向です。
このケースでは、
同じFX会社の異なる口座にまたがった両建て取引をする形式が考えられます。
ただ、注意点として
両建てを認めるものの条件を設定している
というFX会社が多いです。
同じFX会社の中で複数の口座を持ち、
口座をまたがって両建てのポジションを持ってよいかどうか事前にFX会社に確認をしておきましょう。
異なるFX会社間での両建て
異なるFX会社でそれぞれ口座開設の手続きをして、
一方で買いポジション、もう一方で売りポジションを持つ形式で両建てポジションを持てるケースがあります。
もし禁止されていてもバレそうにないと考える方も多いかもしれませんが、
各会社の規定で両建て禁止の場合は、両建ては行なってはいけません。
発覚した時の罰則は厳しい内容になっているので、注意が必要です。
ちなみに、
複数FX口座を持つメリットは
トレードの目的別に資金を分割する
などがあります。
複数のFX会社で口座を持つこと自体は問題ありませんが、
両建てポジションを持つことのないように、
意図的な対応はもちろん、誤って両建てポジションになってしまわないように注意しましょう。
同じ口座内で両建てを行なうメリット
異なるFX会社、あるいは同じ会社の中でも複数口座にまたがっての両建てを禁止している会社は多いですが、同じ口座内での両建て取引は、ほとんどの会社が認可しています。
同じ口座内での両建ては、ほとんどのFX会社で認可◎
運用によっては、損失を被ってしまうケースもある取引ですが、
トレーダーにとって『両建て』の実行はメリットがあります。
判断が難しい局面になるケースも少なくないので、
初心者の方には取り扱いが難しい場合もあります。
両建てを実行する際にはメリットとデメリットをしっかりと把握しておきましょう。
利益の確保
保有するポジションで含み益が出ている場合、
両建てを利用することでその含み利益を確保することができます。
近いうちに大きなイベントがあり相場が急激に変動をして
ポジションが損なわれてしまう危険を回避する目的で両建てを利用できます。
例えば、
USD/JPYの買いポジションを
100円のレートで
1万通貨保有したとします。
その後相場が上昇し110円となり、
含み益
110-100×1万=10万円
→10万円の含み益があると仮定します。
このタイミングで
反対の売りポジションを同じボリュームの1万通貨保有し、両建てとします。
こうすることで相場がどれだけ急激に変動したとしても、
利益と損失が相殺され、10万円の含み益が確保できます。
相場が100円になったとしても、
元々の買いポジションで含み損益がゼロになりますが、
売りポジションで110-100×1万通貨の10万円の含み益をもつことになり、
元々の含み益を継続できています。
相場の変動に対応できる
両建てのポジションを活用することで、変動する相場に柔軟に対応することができます。
すなわち、自身が想定した相場の流れと外れそうになった時に、
両建てのポジションを持つことで決済を保留し、次の機会を探ることができます。
例)
ある通貨ペアの買いポジションを保有
想定通り相場が上昇
↓
ある時点で頭打ちになり下落
上記のような状態になった場合、
将来的に再び上昇すると予想するものの
これ以上の下落が起こるかもしれない局面に差し掛かっています。
この状況で、
買いポジションが含み損を保有する前に、売りポジションを持つ
その後の相場変動は両建てにより相殺
↓
損益ともに増減しない
相場が上昇する見込みとなった時に
売りポジションを決済して再び買いポジションのみ保有する形を取り、
想定した相場まで上昇した段階で買いポジションを決済して利益を確保する、
といった活用方法が考えられます。
強制決済の可能性を下げられる
FX取引には、強制ロスカットという制度があります。
一定の証拠金率を下回った段階で、保有するポジションが自動で決済され、それ以上の損失が発生しないようにする制度で、トレーダーの損失が膨らみすぎないようにする目的で取り入れられています。
保有するポジションが含み損失を抱えてきた段階で反対のポジションを持ち両建てにすることで、それ以上の含み損失の発生を抑える効果があります。
証拠金率の低下を防ぐことができるので、強制ロスカット決済を防ぐことができます。
ただ、これは一時しのぎの対応であるため、相場が反転しない限り含み損失を抱えたままになってしまうことになります。
先の見通しが立てられない、安易な両建ては避ける方が無難です。
両建てを行なうデメリット
同じ取引口座の中で両建てポジションを持つことには、トレード戦略上メリットがありますが、同時にデメリットもあります。
両建て取引は、判断が難しい面があるので、FX初心者にとってはあまり利用を推奨されていません。両建て取引をする際には、起こりうるデメリットを十分に理解したうえで活用するように気を付けましょう。
両建て取引で発生しやすいデメリットについて解説します。
コストが2倍かかる
両建て=実質的に異なる2つのポジションを持つ、なので
トレードをする上で発生するコストが2倍かかることになります。
ポジションを維持するための証拠金
買いと売りのレート差であるスプレッド
などが挙げられます。
FX会社によっては、トレードごとに手数料を徴収するケースもあり、2倍手数料が発生します。
特に短期でトレードをする場合を想定すると、レバレッジの差が影響して、結果的に損失になってしまうこともよくあります。
損切り回避の両建ては危険
FX初心者の多くが、損切りをすることができずに含み損を抱えたまま相場が反転するのを待つ傾向があります。
どんどん相場が悪い方向に行くのを我慢できず、保有ポジションと逆のポジションを保有し、とりあえずその段階以上の損失を膨らませないようなトレードをする方も少なくありません。
しかし、これは一時しのぎの手法で、損失を抱えたままの状態になることを意味します。
相場が好転する見込みがあるなら、両建ての手法は意味がありますが、
ただ単に損切りをしたくないがための損切りは大変危険です。
早めに損切りをすることの重要性を理解し、
予想と異なる相場になってしまったときは決断を早くできるようになることが大事です。
マイナスのスワップポイント
FXでは、『スワップポイント』と呼ばれる、
通貨ごとの金利差から算出される、蓄積されるタイプのポイントがあります。
スワップポイントとは?
異なる通貨の金利差によって生じるポイントのこと
プラスのポイントもあれば、マイナスのポイントもあります。
両建てのポジションを長期間持ったままにしておくと、
このスワップポイントがたまっていきます。
しかし、多くのFX会社ではマイナス側のポイントの方が大きく設定されているため、
両建ての場合はトータルでマイナスポイントが蓄積されるケースが多くなります。
ポジションを保有する時間が長くなればなるほど、
損失が拡大していってしまう結果となります。
規約違反の両建てはバレる?
海外FX会社の多くが、
複数口座あるいは異なるFX会社をまたがっての両建て取引を禁止しています。
FXトレードの初心者の方の中には、異なる会社での両建てをすれば、バレることはないのではないかと考える方も少なくありません。
海外FX会社が定める規約は絶対に守るべきで、規約を破ると大きな罰則が科せられます。バレなければいいという問題ではありません。
ルールは守りましょう。
利用規約を必ず守る
海外FX会社を利用する際には、必ず利用規約を守りましょう。
異なる会社をまたがっての両建て取引がどのように発覚するのか、その仕組み自体は公表されていませんが、もしバレた場合は、口座凍結やFXトレードの停止などの厳しい措置を受けることになります。
発覚までに稼いだ利益を全部取り上げられることも考えられます。
どうしても両建て取引をしたい場合は、数は多くありませんが両建てを禁止していない海外FX会社を選択してトレードをしましょう。
海外FX会社が両建てを禁止する理由
海外FX会社の多くが両建てを禁止することには、ちゃんとした理由があります。
FX会社側が損失を被る可能性が高くなることが最大の理由となります。
特に海外FX会社にとっては、海外FX会社ならではの問題があります。
会社側が損失を被る仕組みも含めて、海外FX会社が両建てを厳しく禁止している理由を解説します。
ゼロカットとボーナス
海外FX会社特有のサービスに、『ゼロカット』と『ボーナス制度』があります。
このゼロカットとボーナスを両建て取引と合わせて利用することで、
トレーダー側は確実に利益を得る手法を利用することができます。
ゼロカットとは、急激な相場変動が起こった時に、
ロスカットのレートを超過して決済が起こった場合、ロスカットを超過した過剰損失部分をFX会社が負担する制度になります。
ゼロカットとは?
急激な相場変動によりロスカットの水準を下回った部分の過剰な損失を
トレーダーではなくFX会社側が負担するサービス(海外FX限定)
仮に、同じ会社の中で複数の口座を利用して、両建てでポジションを持っていて、急激な相場変動が発生したためにロスカットの水準を超えた決済が起こったとします。
両建てのうち、
一方のポジションで50万円の利益、
もう一方の反対ポジションで50万円の損失が発生する相場変動が起こった時に、
損失が発生した方ではゼロカットが発動して損失が30万円に限定されたとしても、
利益が出た方は全額の50万円が利益となります。
わざと相場が大きく変動するイベント前を狙って両建てポジションを保有することで、
ゼロカットシステムを利用することで確実に利益を獲得できる手法となります。
ボーナスの場合も、ゼロカットに置き換えて考えると同様の活用をすることが可能です。
ゼロカット・ボーナスを採用するXMは両建てを禁止
海外FX会社の中でも日本人に人気の、「XM Trading」という会社があります。XMにおいても、複数口座を活用した両建ては禁止しています。
XMではゼロカットの制度もボーナスも両方採用しています。
両建てを駆使するトレーダーが増えると、損失を多く抱えるリスクがあるため、両建て取引は厳格に禁止しています。
もしどうしても両建て取引を活用したトレードをしたい場合は、両建てを禁止していない海外FX会社を利用するようにしましょう。
まとめ
ここまで海外FXが両建てを禁止する理由について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
両建ては、きちんとした戦略に基づいて使用されれば、有効な手法となりますが、
活用方法によっては不正に利益を確保できる手法でもあります。
初心者には取り扱いが難しい部分も多いので、
なかなか実践で活用するのは難しいです。
両建て取引を利用したい場合は、
必ず規約で禁止していないFX会社を選択して活用するように気を付けましょう。