海外FXは個人ではなく法人化して取引することも可能であり、法人化を行うことで様々なメリットが発生します。
しかしメリットと同様にデメリットもあり、無闇に法人化すると自分の首を絞める結果になりかねません。
この記事では、海外FXの法人化のメリット・デメリットに関して解説します。
メリット・デメリットの双方の内容を理解してから法人化を検討しましょう。
法人化とは自分で事業を立ち上げFXの取引を行うこと
『法人化』とは名の通り、
FXにおける取引を自分で事業として立ち上げ、仕事として取引することを指します。
法人化とは?
FXにおける取引を自分で事業として立ち上げ、仕事として取引すること
実際にFXに限らず株式や債券といった投資は、
銀行で機関投資家という立場の人間が仕事として取引している事例があり、
投資を仕事とする行為はおかしな話ではありません。
事業を立ち上げるとありますが、
実際に会社を立ち上げる等をする必要はなく、
あくまで名義上で事業を立ち上げれば法人化が可能です。
海外FXに限らず、投資では法人化を行うことで個人とは様々な違う点が生じます。
国内ではレバレッジに上限が定められ(個人では25倍まで)、
法人となれば上限が撤廃され25倍を上回る倍率で取引が可能となります。
しかし海外FXは国内と違い、
元からレバレッジの上限が存在しないため
上限撤廃というメリットは存在しないどころか、
実は海外FXにおける取引面での法人化で生じる違いはほとんどありません。
大きく変わってくるのは税金面の話です。
海外FXの取引で法人化という考えが出るのは、
一定以上の収益が出せるようになったトレーダーの話となるでしょう。
海外FXで法人として取引するには
海外FX業者に限った話ではありませんが、
業者では個人口座以外に法人が利用する専用の法人口座があります。
法人として取引する場合は、事業として立ち上げ法人化した後に法人口座を開設します。
個人口座とは別となるため個人口座を持っている方でも、
改めて法人口座の開設は可能
しかし、もちろん別枠となるため情報登録から開設まで全て法人として、
最初から情報入力と必要書類の提出をしなければなりません。
趣味のレベルで取引する個人と違い、
法人は仕事として取引する関係上、個人以上に提出する書類が必要となります。
法人の口座開設に必要な書類は?
利用する海外FX業者により異なりますが、
主に必要となる書類としては以下が挙げられます。
住所証明書
事業役員全員の身分証明書
基本的に事業を立ち上げた証明となる書類が必要と考えればいいですが、
最初に提示された種類に、新たに追加で必要書類が提示されるケースもあるため、
予め業者側へ問い合わせて確認した方が確実です。
海外FXは国内に比べ簡単に口座開設できますが、それは個人の話です。
仕事として取引する法人となれば話は別で、
開設の審査も厳しいものとなります。
必要書類が用意できても必ず審査に通過できるとは限らず、
審査に落とされて取引できない可能性も視野に入れておきましょう。
逆に考えると、法人化をする際には
法人口座の審査を通過できるレベルで事業を立ち上げる必要があるといえます。
海外FXで法人化するメリット
海外FXにおいて法人化するメリットは取引ではなく税金面中心に出ます。
- 税率が抑えられる
- 繰越損失が可能
- 経費の範囲が個人と比べ広がる
それでは、それぞれのメリットについて説明していきます。
税率が抑えられる
FXにおける税金は国内と海外で違いがあります。
国内は収益の金額問わず一律20.315%です。
国内課税:一律20.315%
しかし、海外は課税の分類が変わるため、
稼いだ金額により税率も変わります。
最低税率5%(195万以下)
最高税率45%(4000万以上)
最低では195万以下で5%、
最高で4000万以上で45%となり、
ここに住民税の10%が加わります。
4000万稼ぐと半分以上取られてしまう結果になります。
最低税率15%(800万円以下)
最高税率23.2%
一方で法人化すると、個人では所得税として税率が変わりましたが、
法人では法人税に分類され
収益が800万以下であれば15%、
超えれば23.2%となり最大の45%と比べ約20%も税率を抑えられます。
つまり、法人化した場合、
最低税率:5→15%にUP
最高税率:45→23.2%にDOWN
=稼ぎが多い場合にメリット◎
税率を見れば分かるように、
収益が195万以下だとすれば、
個人では5%で済んでいたところが15%に税率が増えてしまいます。
繰越損失が可能
法人化を行うと、海外FXでも確定申告で繰越損失を行うことが可能となります。
FXにおける繰越損失とは?
過去の損失を税金の計算に用い、
マイナスとして相殺するシステム
最大で3年間遡れますが、個人における繰越損失は国内だけの話であり、
海外FXで取引している場合は利用できません。
しかし、法人化を行うことで海外FXでも繰越損失が可能となります。
過去に大きな損失を出している場合は現在の収益から差し引くことで、
総合した所得を減らし、課税する金額を減らせます。
ちなみに法人化による繰越損失の年数は国内・海外でも同じことであり、
個人では3年だったのを法人化することで10年にすることが可能です。
経費の範囲が個人と比べ広がる
法人化を行うと、個人に比べ経費として認められる範囲が広がります。
確定申告における所得は経費で差し引くことが可能であり、
個人でも認められれば差し引けます。
しかし、経費として認められる範囲は広くありません。
FXにおける経費として考えられるものとしては以下が挙げられます。
・取引に使う機器、パソコンやスマホ代
・機器を動かすための電気代
・勉強のためのセミナー、書籍にかかった費用
個人の場合、パソコンやスマホは取引以外にも利用しているためか、経費として認められる割合が少ないか認められないケースが多いです。
電気代も同様の理由で経費として計上するのは厳しいです。
完全にFXで取引する専用の機器となれば話は別ですが、今度は専用の機器を用意するための費用が必要となるため余計な出費となってしまうでしょう。
しかし法人化を行うと、パソコンや電気代も全て事業としての利用とみなされるため、
全額経費として認められる可能性が高くなります。
また、個人では必要だった割合の証明を行う手間も必要ありません。
さらに、法人化を行うと以下のようなケースも経費として認められます。
・事業で利用している雑貨の費用
・保険料
・役員報酬
役員報酬は法人化をする際に、家族を役員とみなし支払うことで節税することも可能です。挙げられたケース以外にも法人化であれば認められる可能性は広くなるため、法人で利用していると考えられる経費を整理しまとめておけば、経費が多くなり差し引くことで課税を抑えられるでしょう。
海外FXで法人化するデメリット
法人化で生じる税金面におけるメリットは様々ですが、
多方面から見ると残念ながら法人化によって生じるのはデメリット面が多いです。
節税に釣られて何も考えず法人化すると、
下記に挙げられるデメリットに引っかかり痛い目を見てしまう危険性が高いです。
そのため、
デメリットを理解した上で本当に法人化を行ってよいか判断した方がよい、と言えます。
その場合は、個人で考えるより税理士等の専門家に相談した方が安全でしょう。
確定申告では決算書を提出する必要がある
FXは個人における取引では
専業:38万以下の収益
副業:20万以下の収益
であれば確定申告を行う必要はありません。
しかし、法人化をしている場合は
多額の収益を出そうが、赤字で終わろうが
必ず確定申告を行わなくてはいけません。
更に確定申告も個人であれば一般的な申告書に記載すればよいのですが、
法人の場合は、一般の確定申告に比べ様々な情報を記載する必要のある複雑な決算書の作成を行う必要があります。
普段から決算書に触れたことがない立場であり、
法人化を行って日が浅い方の場合は決算書の記載に太刀打ちするのは困難です。
法人化した場合は個人と違い様々な情報を記載しなければなりませんが、
中でも気をつけたいのは
個人と違い法人は決済していないポジションも記載しなければならない点です。
現在のポジションにおける金額を全て調べなければいけませんが、
ポジションが損失となっている場合は差し引けるため、
必ずしもデメリットだけではありません。
また、決算書は必ず提出しなければいけませんが、
気にしなければならないのは書類の提出だけでなく納税も同様です。
取引の結果に問わず法人住民税は必ず支払わなければならず、
赤字でも7万程度は必要です。
法人化を考えている方は、
決算書と法人住民税を判断材料として視野に入れておきましょう。
個人に比べ支払う税金の種類が多い
FXで法人化を行うと所得税と住民税だけであった個人に比べ、
法人では法人税に加え以下の税金も支払わなければいけません。
- 地方法人税
- 特別法人事業税
- 法人事業税
- 法人住民税
地方法人税と特別法人事業税は法人税と比例して税率が変わります。
地方法人税は2%から2.4%、
特別法人事業税は最低7%から8.6%の範囲で変わります。
法人事業税は事業の規模により3.5%から7%の範囲で変わり、
海外FXで取引をするために法人化を行う場合は規模もそこまで大きくはならないため、
法人事業税も3.5%近くになるケースは多いでしょう。
法人住民税は他と違い、2種類存在します。
一律で決める種類と法人税の税率により決める種類があり、
税率で決める場合は1.3から1.6%の範囲です。
一律の場合は前途したように
赤字でも7万は支払わなければいけませんが金額で判定され、
1000万を超えて1億以下だと18万となります。
法人となれば個人に比べ税務署側の目も厳しいものとなります。
一つの欠けも許されず忘れてしまうと申告漏れとなり
加算税といった余分に税金を支払わなければならないペナルティが課せられてしまいます。
法人設立に時間と資金がかかる
法人化における事業の設立も決して簡単ではありません。
時間と共に資金がかかってしまうため、FXのためすぐに法人化して対応はできません。
法人化をする際には
事業として立ち上げる必要があります。
株式であれば1円から設立可能です。
しかし、法人として立ち上げる場合は
法人登記が必要となります。
金額は規模や状況で変わってきますが、約20万程度と個人には決して安くない金額です。
更に設立後も維持をしていかなければならないため維持費がかかり、
前途した決算書へ個人で対応できない場合は
税理士を始めとした専門家へ依頼する必要も出てくるため雇用費もかかります。
金額はケースにより変わりますが、
依頼するとなれば安くても数万かかるのは避けられないでしょう。
決して金額としては安くないため、
かかる費用も含め海外FXを利用する際の法人化は、
明確に稼げるようになった時の方が良い話になっています。
設立の資金と時間はもちろんですが、
法人化における一番の問題点は銀行の口座です。
法人として事業を運用する以上は個人の口座を利用できず、
法人名義で新しく開設を行わなければいけませんが、
海外FXにおける法人口座と同じように銀行の口座開設も必ずできるわけではなく、審査が必要です。
しかし審査が問題でFX取引をするためだけに法人化をしたという理由の場合は、
通過できないケースもあり得る話であり、
審査へ通過するためにはFXの取引に加え他の副業関係による法人化も視野に入れる必要が出てきます。
海外FXで法人化を考える場合は
銀行口座の審査に通過するためには、FX以外の事業も考えておいた方がいいでしょう。
法人に対応していない海外業者もある
様々な海外FX業者があるように、
全ての海外業者が法人口座へ対応しているとは限りません。
していない業者は法人ではなく個人として口座を開設しなければなりません。
個人に比べある程度選べる海外FX業者が制限されると考えた方がよく、何より現在は法人口座を開設できる業者だとしても将来的に停止する可能性もゼロではないです。
メジャーどころを選べば問題ないと考えてしまいがちですが、残念ながらメジャーどころも法人口座の受付を一時停止しているという事例が出てきているため、
国内と違いメジャーである海外FX業者が選択肢から外れる可能性もあります。
一方で法人口座が開設できるからと信頼できる安全な業者とは限らず、
悪質な業者へ引っかかってしまうと事業として取引をする以上、
被る被害は個人の比ではないためよく調べ慎重に選ばなければいけません。
法人ならではの縛りも出てくる
海外FXにおける取引をするための法人化といえど、
事業として法人になる以上は個人で取引するに比べ様々な点で縛りが出てきます。
分かり易い事例が、
取引で得た金額を自由に利用できないという点です。
役員報酬
個人では稼いだ金額は本人が自由に利用していいでしょう。
しかし、法人の場合は
役員報酬という形で決めた金額を、毎月一定額を受け取る形式にしなければいけません。
報酬の金額は法人化する際に決められますが、
変更するには手続きが必要になり決して簡単な物ではありません。
そのため、容易に変更できず事業の継続も含めよく考え決める必要があります。
役員報酬を受け取ると、
収入として所得税と住民税が発生するのも忘れないでおきましょう。
役員報酬を受け取ると:所得税と住民税が発生
法人化として問題になるのが現在FXで取引しているトレーダーの立場もあります。
副業トレーダーは不可能になる場合も
もし副業としてFXを行っている場合は、
職業や勤務している会社によっては法人化を行うことが不可能となるケースもあるため、
自分の立場では法人化が可能か確認する必要があります。
税務調査
そして法人化による縛りとして最も恐ろしく問題になるのが税務調査であり、
5年に一度税務署側の主導で行われ納税が問題ないか厳しく確認されます。
不適切だとみなされれば加算税を始めとした申告漏れのペナルティが生じるどころか、
何かしら法的な処罰を受けてしまう恐れもあるでしょう。
海外FXの取引で法人化に向いているトレーダー
メリットやデメリットの内容も含めた上で法人化に向いている方としては、
以下のような立場のトレーダーが挙げられます。
FX以外に何かしら事業を考えている
資金・時間に余裕がある
十分な利益を出せているかに関しては、
長期間安定して収益を出しているかがポイントです。
短期間だけでは運がよかっただけの可能性も否定できないため、
法人化して利益が出せないとなってしまえば待っているのは地獄です。
他の事業に関しても、FXと同様に安定した収入が出せているかがポイントとなるため、
問題ないか法人化の選択肢に入れる際にはよく考えましょう。
法人化に向かないトレーダーとは?
逆に以下のような立場の方は不適切と考えられます。
資金・時間に余裕がない
こういった方は下手に法人化をしない方が良いでしょう。
初心者の方はまず利益を出せるようになるため、
FXに対する知識と経験を積み重ねる必要があり、法人云々を考える必要性はありません。
資金と時間に関しては最低限ではなく、
余計な出費や対応をする必要が出た時も余裕を持ってできるレベルが望ましいでしょう。
実際に向いているか否かを含め、税理士に情報を提供して相談してみましょう。
まとめ
海外FXにおいて法人化で税金面における様々なメリットが生じるといえど、同時に生じるデメリットも実に多く決して安易に行ってはいけません。
決算書等を見れば分かるように法人化を行うことで、個人の時には意識しなくても問題がなかった様々な面に向かい合わなければならなくなり、
かかる労力は個人の比ではないでしょう。
一方で税金面に対するメリットは利益が多くなればなるほど、個人に比べ効果は大きくなり、デメリットを考慮した上でも法人化する意味があります。
個人で得た利益に対し、納税する金額が気になると考えている方はご検討ください。