FXトレードでは、損益をリスクリワード比で計算するとリスク管理ができます。
リスクリワードを知らないままだと、
気づかないうちに優位度の低い取引をしてしまいがちです。
そこで今回は、
FXのリスクリワードについて、基礎知識や使い方をまとめて紹介します。
そもそもリスクリワードって何?
リスクリワードとは、損失と利益の比率です。
損失が発生するリスクはどのくらいあるか
を表します。
リスクリワード=損失と利益の比率
例えば、
利益1万円で損失1万円なら、リスクリワードは1:1
利益2万円で損失1万円なら、リスクリワードは1:2
利益1万円で損失2万円なら、リスクリワードは2:1
です。
勝率や利益よりもリスクリワードのバランスを考えよう
「勝率は何割だったか?」「どのくらいの利益を上げられたか?」
ということを気にされる方は多いかと思います。
しかし、初心者の方で
「リスクリワードを何対何に設定してトレードしたか?」
を気にする人は少ないのではないのでしょうか。
例えば、
10pipsで利益確定し、損切りを100pipsに設定していたとします。
この場合、リスクリワードは10:1となり、
損切りにかかる確率は下がるので勝率は上がります。
しかし、10回のトレードで9回勝っても、1回負けてしまえばどうなるでしょうか?
例)利益確定10pips、損切りを100pipsに設定で
(リスクリワード=10:1)
10回のトレードで9回勝ち・1回負けた場合
利益=10pips × 9回 = 90pips
損失=100pips × 1回 = 100pips
結果:利益90pips ・損失100pips(ー10pips)
勝ちの利益を、負けの損失で失ってしまう!
つまり、9回のトレードでコツコツ貯めた利益を、1回のトレードで失ってしまうのです。
相場で常に勝つことはできません。
勝率よりもリスクリワードのバランスを考えることが大事なのです。
トレードの理想は損小利大
FXでは「損小利大」が大事だというけど、
どういう意味だろうと思ったことはありませんか。
また、上で例に挙げたように、
コツコツ貯めた利益を1度の大きな損失で溶かしてしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。
どんなに勝率が高くても、トータルでマイナスなら意味がありません。
FXで重要なのは、いかに損失を少なくし、長期にわたって利益を伸ばしていくかです。
リスクリワードを理解し、損小利大のトレード手法を身につけましょう。
リスクリワードで決済すべき場所が見えてくる?
FX初心者の頃は、エントリーするべき場所だけに注目して、
決済するべき場所までは考えていない方も多いのではないでしょうか。
エントリーと同時に損切りの注文は入れているものの、
決済についてはできるだけ利益を伸ばしたいと考えて
決めていない方も多いのではないでしょうか。
時間帯における市場の値動きや、通貨ペアのボラティリティなどのデータを基に、
この時間帯でこの通貨ペアなら何pipsくらい伸びるかの予測ができるようになります。
それをもとにすれば、
どこで決済すればいいかもわかるようになるので、
安定して勝つこともできるようになります。
リスクリワードと勝率の関係
リスクリワードの設定によって、狙うべき勝率は変わってきます。
では、どのように変わってくるかをそれぞれみていきましょう。
リスクリワード1:1
1回の取引の利益を1万円、損失を1万円として、10回トレードしたとします。
勝率50%で利益が1万円×5回=5万円、
損失が1万円×5回=5万円となり、
収支トントンとなります。
仮に勝率が40%だった場合は、
利益が1万円×4回=4万円、
損失が1万円×6回=6万円なので、2万円の損失が発生してしまいます。
つまり、利益を上げるためには常に50%以上勝たなければいけません。
リスクリワード1:2
1回の取引の利益を2万円、損失を1万円として、10回トレードしたとします。
勝率40%で利益が2万円×4回=8万円、
損失が1万円×6回=6万円となり、
利益を上げることができます。
仮に勝率が30%だった場合は、
利益が2万円×3回=6万円、損失が1万円×7回=7万円なので、
1万円の損失が発生してしまいます。
つまり、利益を上げるためには常に40%以上勝たなければいけません。
リスクリワード1:3
1回の取引の利益を3万円、損失を1万円として、
10回トレードしたとします。
勝率30%で利益が3万円×3回=9万円、
損失が1万円×7回=7万円となり、
利益を上げることができます。
仮に勝率が20%だった場合は、
利益が3万円×2回=6万円、損失が1万円×8回=8万円なので、
2万円の損失が発生してしまいます。
つまり、利益を上げるためには常に30%以上勝たなければいけません。
リスクリワード1:4
1回の取引の利益を4万円、損失を1万円として、
10回トレードしたとします。
勝率30%で利益が4万円×3回=12万円、
損失が1万円×7回=7万円となり、利益を上げることができます。
仮に勝率が20%だった場合は、
利益が4万円×2回=8万円、
損失が1万円×8回=8万円なので、収支トントンとなります。
つまり、利益を上げるためには常に20%以上勝たなければいけません。
リスクリワードと勝率の損益分岐点
上記のリスクリワードと勝率の損益分岐点(0%となる部分)をまとめると、以下のようになります。
(出典:https://www.oanda.jp/lab-education/blog_column/risk_reward/#all)
リスクリワードは最低でも1:1に
では、リスクリワードのリスクを大きくし、
リワードを小さくした場合に必要な勝率はどうなるのでしょうか。
10.67では勝率は60%、
10.43なら勝率70%なければ利益を上げることができません。
例)
10.5に設定した場合・・・
100pipsの利益に対して200pipsの損失が発生する可能性がある
この場合、
損失が先行すれば、2回連続で勝たなければ元を取り戻すことができない
相場は思わぬ方向に動いて損をすることもしばしばあります。
リスクリワードを1:1以上に設定しておけば、
勝率50%でも長期的には利益を上げることができます。
リスクリワードの心理的なワナ
リスクリワードの大切さを頭ではわかっていても、実際に実行できない方もいます。
それはなぜでしょうか。
それは、損をしたくないからです。
例えば、チャート分析の結果では3万円の利益を狙える可能性があり、
今決済すれば1万円の利益を手にできるとします。
これまで利益の蓄積のあるトレーダーであれば
そのまま保有しておこうと考えるでしょうが、
前回のトレードで1万円損している人はどう考えるでしょうか。
ここから下げたら前回の1万円を取り返せないので今決済して、
とりあえず勝率を上げておこうと考える人も少なからずいるのではないでしょうか。
人は利益を上げた時の喜びよりも損を出したときのダメージのほうが大きいので、
目先の利益に飛びついてしまいがちです。
これは、最初に決めた自分のトレードルールを破り、
感情に負けてしまうことを意味します。
その結果、トレードをするうえで最も大事なことを自ら破ってしまうことになるのです。
したがって、IFO注文やOCO注文で損切りを入れるときに、
利益確定の注文も入れておけば、
感情に流されずにリスクリワードのバランスを守ることができます。
【参考】バルサラの法則
ご自身のトレード内容を見直すのには、
『バルサラの法則』を活用されるのもいいかもしれません。
バルサラの法則とは、数学者ナウザー・バルサラが考案した法則で、
トレードを繰り返したときに次の3つの数値をもとに、
資金がゼロになる「破産確率」を表から導き出すことができるものです。
勝率 = 勝ちトレード数 ÷ 総トレード数 × 100
リスクリワード = トレードの平均利益額 ÷ トレードの平均損失額
リスクにさらす資金比率 = 1トレードの許容損失額 ÷ 口座資金 × 100
一般的にリスクにさらす資金比率は総資産の2%以下に抑えることで安全に取引できるといわれています。
破産確率はリスクリワードと勝率から求められ、
0に近づくほど破産する確率が下がります。
ご自身のトレード記録とバルサラの破産確率表を照らし合わせて、
リスクリワードの見直しを図るのもいいかもしれません。
リスクリワードの2つメリット
リスクリワードを意識することには、2つのメリットがあります。
損切りとも深いかかわりがあり、
資産管理の上で重要なことなのでしっかり覚えておきましょう。
勝率ではわからないことが見えてくる
勝率にこだわりすぎると、
自分のトレード方法が正しいのかどうかわからなくなることがあります。
というのも、勝率は高いのに、実際はあまり儲かっていなかったり、
逆に損をしていたりすることがあるからです。
80~90%勝っているにも関わらず、
損益が低い場合、おおむねリスクリワードが低くなっている
勝率を100%に近づけるよりも、リスクリワードで損益のバランスを整え、
自分の取引のパフォーマンスを健全なものにするほうが賢明です。
損切りを受け入れやすくなる
リスクリワードを意識すれば、損切りは負けという感覚が薄れます。
なぜなら、勝率50%以下でも利益を上げられることを実感できるからです。
そして、損切りは資産運用の成績を上げるために欠かせない行為だと
認識できるようになるからです。
相場がどこまで上がるか下がるかなんて、
誰も正確に予想することはできません。
自分でコントロールできない部分に期待するより、
自分でコントロールできる部分をトレーニングするほうがスキルの上達につながります。
リスクリワードを使うときの3つのコツ
それでは、FX初心者がどのようにリスクリワードをトレードに取り入れるといいのかという点についてみていきます。それには、以下の3つのコツがあります。
- 最初から固定して考える
- リスクリワードは1:2を目標に
- 勝率にこだわりすぎない
最初から固定して考える
トレードごとにあれこれ考えると迷いが生じます。前述したとおり、通貨ペアや時間帯、市場によってある程度のボラティリティは予測できます。そのため、リスクリワードは初めから固定して考えるほうがいいでしょう。
なぜなら、トレード中に余計な感情を入れることなくて済むからです。リスクリワードの数字を気にしすぎて損切りできなければ、トレードの判断を鈍らせることになり危険です。
リスクリワードは1:2を目標に
先ほどリスクリワードは最低でも1:1といいましたが、
やはり利益を伸ばそうと考えるならそれ以上に設定するべきです。
しかしながら、初心者が1:3以上に設定すると失敗するケースが多いのも事実です。
そのため、初心者のうちは1:1から始めて1:2を目標にすることがオススメです。
いきなり、勝率8割、リスクリワード1:3を目指すのではなく、
現実的な数字からスタートして、相場観などのスキルを磨いていきながら、
勝率とリスクワードの両方を徐々に上げていくのが理想的です。
勝率にこだわりすぎない
リスクリワードを意識すると、勝率は下がります。
それは、1回の利益をじっくりと伸ばすため、
勝ちで終わるトレードの回数が減るからです。
安定して利益を出しているのであれば、
勝率が低くても問題ないので心配する必要はありません。
リスクリワードを決める基準は損失額
これまで説明してきたように、エントリーするときに利益確定と損切りのレートを決めておくことが重要です。
しかしながら、相場がどう動くかはわからないので、
利益はコントロールできない一方で、損失をコントロールすることはできるのです。
その損失を総資金の2%に抑えることで、
取引数量と値幅を調整することができます。
そうすれば、そのリスクに合わせてリワードを決定すればいいということです。リ
ワードだけを求めてリスク管理を怠ると、
本来トレードすべきチャンスに資金不足でエントリーできないことにもなりかねません。
どれだけ良い手法を使っても、証拠金がなくなったら終わり
です。
資金管理はしっかりとしたうえでトレードを行いましょう。
リスクリワードを意識して安定的に利益を上げよう!
ここまで、リスクリワードに関して解説しましたがいかがだったでしょうか。
- リスクリワードとは「利益と損失の比率」である
- 勝率よりもリスクリワードが大事である
- リスクリワードは、最低でも1:1以上にする
相場で長く生き残るためには、証拠金を守る資金管理をしっかりと行うと同時に、リスクリワードのバランスを守ってトータルでプラスになる方法を選ぶことが大事です。どれだけいいところでエントリーしても、決済する場所が悪ければ利益は伸びません。
また、いくら勝率が高くても、ギャンブル的なトレードをしていたらいつかは資金を溶かしてしまいます。損失を抑え、利益を大きく伸ばす「損小利大」のトレードを心がけ、リスクリワードを意識しながらトレードを続けてください。