FXにおけるテクニカル分析の一つに、「一目均衡表」というものがあります。
これは、FXテクニカル分析の中で数少ない日本人により組み上げられた分析手法です。
この記事では、一目均衡表の上手な活用方法について解説をしていきます。
一目均衡表とは?
一目均衡表とは、1935年に発表された、歴史のある分析手法です。
FXのテクニカル分析の中で日本人が開発したものは珍しく、一目均衡表もその一つです。
一目均衡表とは?
一定のルールにのっとって描かれている5本の曲線を活用して、
それぞれの曲線の関係性から相場をみるテクニカル分析
新聞社に勤務していた細田悟一という方が、
多人数の人出と7年もの時間をかけて構築した理論です。
一目均衡表という名称は、細田悟一氏のペンネームが
「一目山人」であったことが由来だといわれています。
かなり昔に開発された分析手法ですが、
現代にも十分に通用する高性能なテクニカル分析として、日本だけでなく世界のトレーダーの方々に普及しています。
- 基準線
- 転換線
- 先行スパン1
- 先行スパン2
- 遅行スパン
以上、それぞれの特徴ある5本の曲線によって行われる分析手法です。
①基準線
基準線とは、過去26日間(時間足によってはローソク足の本数)の最高値と最安値の平均を線で結んだものです。
相場の中期的な動向を表現するといわれています。
例えば、USD/JPYの日足のチャートにおいて、
過去26日間の最高値が100円、
最安値が90円の場合は95円が基準線の点ということになります。
毎日の基準の点を描き、これらを直線でつないでいくことで基準線が描かれていきます。
平均値ですので、大きな値動きがなければ水平に推移することも珍しくありません。
②転換線
転換線とは、
過去9日間(時間足によってはローソク足の本数)の最高値と最安値の平均値を線で結んだものです。
基準線よりも短期的な相場の動向を表現するといわれています。
算出の方法は、基準線と同様です。
基準線の「26」、転換線の「9」という数値は、
一目均衡表において基礎となる数値で、
設定のカスタマイズなどでこの数値を変更することはできないFX会社が多くなっています。
③先行スパン1
先行スパン1とは、基準線と転換線との平均値を26日先に向けて描いた線のことです。
現在の相場の動向が、将来の相場変動にどのような影響を及ぼすか、
その可能性を示唆した指標とされています。
一目均衡表では、現在の相場動向だけではなく、
未来の相場を見据えたテクニカル分析という点で非常に珍しく、
見るべきポイントが多い分析手法と言えます。
視覚的に相場の動向を判断できて、一目で見てわかりやすいという特徴があります。
④先行スパン2
先行スパン2とは、
過去52日間の最高値と最安値の平均値を26日先の個所に描いた線のことです。
先行スパン1と並んで、
将来の相場動向を見据えた個性的な分析情報を提供してくれます。
先行スパン1と先行スパン2とを組み合わせて、お互い2つの直線の間を塗りつぶしたものを「雲」と呼びます。
一目均衡表の代名詞とも言える雲は、
相場判断において多くの情報を与えてくれる優れた分析ツールとされています。
先行スパン1と先行スパン2を組み合わせた雲により、
様々な判断基準が得られる点は大きなメリットです。
⑤遅行スパン
遅行スパンとは、当日の終値を26日前の個所に描いて、
それらを結んだ線のことです。
地溝スパンには、
当日の価格と過去26日前の相場を比較するという意義があります。
過去にさかのぼって分析ポイントを見出すテクニカル分析は非常に珍しく、
一目均衡表の大きな特徴となっています。
遅行スパンは、ほかの分析直線と比べても最も重要だと考えられている線で、
しっかりと性質を理解してトレードに生かしていきたい情報です。過
去の相場にさかのぼって現在の相場を判断する、テクニカル分析の中でも珍しい視点といえます。
一目均衡表における理論
一目均衡表には、大きく分けて3つの考え方が導入されています。
- 時間論
- 波動論
- 水準論
言葉としては難しいですが、
要するに時間と相場の波と相場の範囲のことを考える理論が導入されている分析手法です。
多くのテクニカル分析が、現在における相場のトレンドを読み取ったり、
現在の相場が買われすぎ/売られすぎなどの判断をするためのツールであるものが大半である中、一目均衡表は過去と未来を含めた分析を行っている点に大きな特徴があります。
時間と波、範囲を一度にまとめて分析できる点が一目均衡表の画期的な部分といえます。
時間論
一目均衡表における時間論とは、時間の視点から相場の分析を行う考え方です。
時間論とは?
時間の視点から相場の分析を行う考え方
一目均衡表では、「9」、「17」、「26」を基本数値として考え、
さらに基本数値を加減算して得られる「33」、「42」、「65」、「76」を複合数値と考えます。
ある時点から、これら関連の数値の日数が経過したときに相場が一定の法則で動く可能性が高いと考えるもので、
あらゆる相場予想の基礎的な考え方となっている論考です。
先行スパンや遅行スパンが26日前後の相場に関連していく線であることも、
この時間論でいう基本数値から採用された考え方であるとされています。
波動論
波動論とは、分析手法で描かれたチャートの波形から相場の予想をするという考え方です。
波動論とは?
分析手法で描かれたチャートの波形から相場の予想をするという考え方
他の有名なテクニカル分析の考え方に最も近いとも言えます。
相場は一定の波形のパターンを描くと考えられ、
その予想通りに売買をすることで安定して利益を得られるという考え方となります。
一目均衡表の波動論においては、以下の3パターンの波形が一般的だとされています。
- I波動 =上昇だけあるいは下降だけ
- V波動 =上昇して下降または下降して上昇
- N波動 =上昇・下降・上昇または下降・上昇・下降
の3パターンです。
水準論
水準論とは、過去の上値と下値から将来の天井と底を予想する考え方です。
水準論とは?
過去の上値と下値から将来の天井と底を予想する考え方
水準論は値幅観測論と言い換えられることも多く、
次に訪れるであろう天井と底を予想することを主眼に置いた論考とされています。
基準線と転換線が最高値と最安値の平均から算出されていることや、
先行スパンが描く雲が一定の水準を表すという点から、
一目均衡表では水準論がしっかりと根差しています。
一目均衡表では、これら3つの論考を根幹として構築されたテクニカル分析で、
信頼性の高い手法とされています。
一目均衡表を活かした売買ポイント
一目均衡表は、時間と波形、さらには相場範囲といった様々な情報を提供してくれます。
その中で、FXトレードに一目均衡表を活かすためのおすすめポイントがいくつかあります。情報量が多いからこそ、
利用するのは難しいと考えてしまう方も少なくありませんが、
使いこなせるまでに理解すれば、多くの情報を一つの分析手法で提供してくれる大変有用な分析手法と考えられます。
一目均衡表を生かす売買のポイントで有名なものを3つ紹介します。
雲とローソク足の位置関係
一目均衡表の大きな特徴である雲と、
実際の相場であるローソク足との位置関係により、
適切な売買ポイントを見極めることができます。
2本の計算方法の異なる先行スパンにより描かれた雲は、
上部=レジスタンスライン
下部=サポートライン
として機能します。
トレンドが継続している間は、
雲の中でローソク足が上下する動きを見せます。
雲が厚ければ厚いほど、トレンドの継続を強く確信することができます。
逆に、雲をローソク足が突き抜けて大きな動きを見せたときが
トレンドの転換点であると判断することができます。
転換線と基準線との位置関係
転換線と基準線との位置関係でも、売買ポイントを探ることができます。
転換線と基準線は、異なる日数で計算された移動平均線の関係と似ています。
日数が長いほうの移動平均線を短いほうの平均線が下から上に突き抜けた場合、
ゴールデンクロスが発生(=絶好の買いシグナル)と考えられますが、
転換線と基準線との関係も同様に活用することができます。
転換線が基準線を突き抜ける方向により、売買シグナルとみなすことができます。
ただ、移動平均線同様、レンジ相場ではダマシが多くなるので、注意する必要があります。
遅行スパンと現在レートとの関係
遅行スパンと現在レートであるローソク足との位置関係を見て、
売買シグナルを見出すこともできます。
遅行スパンは、一目均衡表の大きな特徴の一つで、
現在レートに対して過去の相場が上下どちらの方向に動きたがっているのかを見極めることができます。
遅行スパンが、
ローソク足を上から下に突き抜けた場合=明確な売りシグナル
と考えることができます。
一目均衡表は、現在だけでなく、未来と過去も含めた相場分析をすることができる、
多機能で情報が多くあふれているテクニカル分析です。
一目均衡表の上手な活用方法
一目均衡表での売買シグナルの見極め方を紹介しましたが、精度の高いトレードになるよう一目均衡表をもとに実施するため、
より上手な活用方法があります。
一目均衡表は昔から多くのトレーダーの方々が使用してきた分析手法であるため、
知名度が高く現在でも多くのトレーダーが活用しています。
そのため、明確な売買シグナルが見いだせた場合は、
そのシグナル通りに相場が動きやすいという見方もできる、有名な分析手法ですので、
ぜひ覚えておいて損はありません。
三役好転を狙う
一目均衡表の売買シグナルのうち、
前述で紹介した3項目(時間論、波動論、水準論)をすべて網羅した場合、
かなりの強い売買シグナルが発生したと考えることができます。
これを「三役好転」といいます。
買いシグナルの場合、
チャートが雲の上に位置していること、
転換線が基準線を下から上に突き抜け、
かつ基準線が横ばいか右肩上がりの上昇機運のケース、
さらに遅行スパンがチャートを下から上に突き抜ける動きが見いだせた場合、
以上の3項目が合わさったポイントは強力な買いシグナルと考えられます。
シグナル発生後、強い上昇トレンドが発生するケースが多くなっており、
絶好のエントリーポイントと考えることができます。
上位の時間足からチェックする
一目均衡表を利用してトレンドをつかむ場合は、
まずは上位の時間足からチェックしていくのが順当な使用方法です。
一目均衡表は、時間足が上位であればあるほど信頼性が高まるテクニカル分析であるといわれています。
そのため、デイトレードをメインに実践している方でも、
まずは日足のチャートで一目均衡表を表示させ、
大きな相場のトレンドをつかんでから、
短い時間足のチャートに切り替えて実際の売買ポイントを探っていく方法が一般的でありおすすめです。
他のテクニカル分析と組み合わせる
一目均衡表は優れたテクニカル分析であることは間違いありませんが、
さらに精度を高めるために、他のテクニカル分析と組み合わせるのもおすすめです。
一目均衡表は、様々な目的で使用することができる分析手法ではありますが、
どちらかといえばトレンドの継続を確認する目的で使用されることが多いです。
雲の動向が視覚的にも見やすいので、
トレンド継続を実感するための分析手法と考えるべきです。
そのため、逆にトレンド転換を見極められるオシレーター系のテクニカル分析と組み合わせることでより精度を高めることができます。
RSIとの併用
例えば、オシレーター系の代表例であるRSIと一目均衡表とは非常に相性が良いです。
RSIは、売られすぎ・買われすぎを見極められる、単純で優れた分析手法です。
RSIとは?
売られすぎ・買われすぎを見極められる、単純で優れた分析手法
両者を組み合わせて売買ポイントを見極める例としては、
ローソク足が雲の中にある
雲の下限に達して再び上昇しそうな状況
RSI:
売られすぎのポジションにある
これから相場が上昇していきそうな状況
にあるときは、
かなりの高い確率で買いシグナルと考えることができます。
まとめ
ここまで一目均衡表の活用方法について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
一目均衡表は、現在の相場状況だけでなく、
未来と過去も踏まえた相場予想ができる優れたテクニカル分析です。
分析内容自体は複雑なところも多く苦労する方も多いかもしれませんが、
慣れて理解が深まれば大変頼りになる分析手法として人気があるのも事実です。
他の相性の良いテクニカル分析とも組み合わせながら、ぜひ上手に活用していきましょう。