FXには様々なテクニカル分析手法が用意されていて、個人投資家のレベルでも自由に利用することができます。
その中で、ATRという分析手法は単純でわかりやすい結果が得られる分析指標です。
この記事では、ATRの特徴とおすすめの活用方法を紹介します。
ATRとはどんな分析?
ATRとは、Average True Rangeの略称になります。
ATR = Average True Range(アベレージ・トゥルー・レンジ)の略称
J・ウェルズ・ワイルダーというアメリカのアナリストの方が開発した分析手法です。
J・ウェルズ・ワイルダーは他にもたくさんのテクニカル分析手法を編み出し、
一般に公開されています。
PIVOTやパラボリックが代表例ですが、
ATRもその中の一つで、世界で利用されている人気の分析手法になります。
とても単純で判断基準として活用できる初心者にもおすすめのテクニカル分析です。
ATRにはどんな特徴があり、
どのような性質のテクニカル分析でしょうか。
ATRは、
活用次第でFXトレードにおける信頼性を大きく増加させることのできる分析手法です。
ボラティリティを示す指標
ATRは、相場価格の変動幅を示すボラティリティから、
売られ過ぎや買われ過ぎなど、
FXの外国為替相場の過熱感を示すテクニカル分析になります。
ATRとは?
相場価格の変動幅を示すボラティリティから、
売られ過ぎや買われ過ぎなど、FX相場の過熱感を示すテクニカル分析
ボラティリティとは相場の変動幅のことを指し、
相場がどれくらい変動しているのかを指し示す指標となります。
ボラティリティとは?
相場の変動幅のこと
相場がどれくらい変動しているのかを示す指標
ATRは、このボラティリティの規模を指し示すテクニカル分析で、
機能としては限定されています。
このため、単独でFXトレードのエントリーポイントを見つけることなどは難しく、
他のテクニカル分析と組み合わせて運用するのが一般的な活用方法となります。
ATRの計算方法
ATRはボラティリティの規模を指し示すテクニカル分析であると紹介しましたが、
ATRはどんな計算で算出されるのでしょうか。
実際のFXトレードでATRを利用する場合は、
計算方法を理解しておく必要は特段ありませんが、
計算方法を理解しておくと指標の仕組みを理解することにつながり、
納得したうえで分析手法を活用していくことができます。
ATRの計算方法は、以下3つの計算式で得られる結果のうち、
最も大きな数値を採用します。
前日終値と当日高値の差
前日終値と当日安値の差
ヒゲも含めた高値や安値を差し引いて計算していく方法で、
値動きの大きさを把握するうえで単純で分かりやすい指標として活用できます。
ATRのおすすめ設定
ATRは、設定した日数の間で所定の計算をして算出されます。
日数の設定は自分で変更することができますが、
一般的には14日で設定します。
他のトレーダーが14日で設定しているケースが多いので、
ATRを活用している多くのトレーダーが見ているものと同じ情報を得ることは、
FXトレードにおける判断において有効に活用することができます。
ATRの日数設定については、特にこだわりがある場合を除けば、
一般的な14日に設定をしておくことをおすすめします。
ATRのトレードへの活用方法
ATRの実際のFXトレードにおける活用方法とはどんなものがあるのでしょうか。
ATRは、紹介してきたように、
ボラティリティの程度を示す指標であり、
トレンド発生途中におけるその規模・程度の大きさを表す指標です。
したがって、
ATRのみでエントリーポイントや相場の転換点を読み取ってトレードに生かすというのは難しくなります。
単独での利用はあまりおすすめできず、
他のテクニカル分析と一緒に使用し、
補助的に相場の読み取りを行う材料とするのが理想的です。
基本的なATRのFXトレードにおける活用方法を3種類紹介します。
ATR上昇時
ATRの分析内容自体がシンプルなので、
実際のFXトレードにおける活用方法もシンプルで簡単です。
ATRが上昇傾向にあるケースの場合、
ボラティリティが増加していることになるので、
トレンドが発生していることを示唆している可能性が高いです。
ただ、あくまでトレンドが起こっている現状を指し示すにとどまる内容で、
トレンドの発生予見をするような指標ではない点に注意が必要です。
エントリーのポイントを見つけるためには、
ATRではなくほかのテクニカル分析と合わせて活用することをおすすめします。
ATRが安定しているとき
ATRが一定の水準で横ばいに安定している状態のときは、
トレンドが同程度の規模で継続していること、
あるいはもみあいの相場、レンジ相場であることを示唆しています。
特にATRが低い水準で安定しているケースでは、
レンジ相場やもみあいになっている相場であることが考えられます。
高い水準でATRが横ばいになって安定しているケースの場合は、
トレンドが一定の水準で継続していると読み取ることができます。
=レンジ相場やもみあいになっている
=トレンドが一定の水準で継続している
他の指標と組み合わせて活用することで、
より信頼性の高い相場読み取りをすることができます。
ATR下降時
ATRが下降している状態のときは、
ボラティリティが減少していることを示すことから、
トレンドの継続が終了することを示唆し、
トレンドの転換点が近づいていることを示すと考えられます。
ただ、どの時点でトレンドの転換が発生するのかを予想することはATRではできず、
あくまでトレンドの力が弱まっていることを指し示すのみとなります。
ATRの下降が発見できた時には、
もうすぐトレンドが終わる可能性があると考え、
転換点が訪れるときに備えて心づもりをしておく必要があります。
以上のようにATRの上昇や安定、
加工によってボラティリティの程度の変化を読み取ることができ、
トレンドの力の強さや弱まり、
転換点が近づいていることを読み取るのに使える分析手法がATRです。
ATR利用における注意点
ATRをFXトレードに利用する際には注意するべきポイントがあります。
ATRは紹介してきた通り、
とても単純で指し示す内容自体もわかりやすいもので、
初心者でも見やすいテクニカル分析といえます。
しかし、その単純さゆえにFXトレードに生かすべき情報量としては乏しい面があるのは否めません。
FXトレードにおいてATRを生かす際には、
ATRの特徴と問題点をきちんと理解し、正しくかつ効率的に活用していくことが求められます。
単独での使用には向かない
ATRは、ボラティリティの程度がどれほどあるのかを指し示す指標です。
ATR単独ではエントリーポイントを見つけることは難しいです。
基本的に、
ATRは他のテクニカル分析と組み合わせて利用することに意義があり、
単独での使用には向きません。
例えば、
移動平均線をチャート上に表示
複数の日数で描かれた移動平均線の
ゴールデンクロスやデッドクロスなどエントリーポイントを発見
↓
ATRをチェックして
ボラティリティが下降ならトレンドの転換点が間近だと判断
↓
絶好のエントリーポイント
といった判断をするなどの活用方法が一般的です。
ATRは単独でFXトレードに生かすのは難しいので、
必ずエントリーポイントを見つけることができる他のテクニカル分析と組み合わせて利用するようにしましょう。
上昇・下降の方向は示さない
また、ATRはボ
ラティリティの規模の大きさに伴ったトレンドの継続については明確に示してくれますが、
そのトレンドが上昇なのか下降なのかを示してくれるものではありません。
相場の読み取りに慣れていない方がATRを信じて
トレンドフォローのエントリーをすると、逆に相場が急速に動いて損失を被ってしまうケースが結構あります。
例えば、相場が急激に上下動を繰り返しているような過敏な相場状況の場合、
実際の相場は激しく上下動を繰り返しますが、
ATRの方は一定に上昇している状態を継続します。
ATRが上昇を強く継続しているため、
トレンドフォローのエントリー
↓
急激に相場が反転して損失
になってしまうことも少なくありません。
ATRはボラティリティの規模のみを示すため、
その方向までは読み取ることができない点には十分に注意する必要があります。
ATRの応用例
ATRを実際のFXトレードに活用する際の応用例を紹介します。
ATRはボラティリティの規模を指し示す指標ですので、
エントリーの後の決済を考える際には有効に活用することができます。
そのため、エントリーのポイント自体は他のテクニカル分析などを活用して読み取る必要があります。
ATRが活躍するのは、
他のテクニカル分析を使ってエントリーポイントを探り、
実際にエントリーをしてからそのポジションを決済するときになります。
他のテクニカル分析と合わせて活用することで、
有用な売買判断の材料を提供してくれるので、ぜひ活用してみてください。
損切り・利確の基準
ATRの大きさを活用して、
保有するポジションの損切り及び利確のポイントの基準を計算する根拠とすることができます。
エントリーをしてポジションを持った際
ATRを確認して、
ATRの3倍の数値を損切り及び利確の相場とする手法が一般的
3倍という数値は、
ATRにおいて相場の転換が起こりやすい水準とされているので、
損切りや利確のポイントとして適切であると考えられることが多いです。
例えば、
USD/JPYの通貨ペアで110.00のレートにて買いポジションを保有したとします。
その時点でのATRが0.300であったとすると、
そのポジションの損切り及び利確のレートは以下のように計算されます。
0.300×3=0.900 (上下の幅の目安)
損切りレート:110.00-0.900=109.10
利確レート:110.00+0.900=110.90
FXトレードにおいて、
利確の決済注文をすることが最も難しいというトレーダーの方も多いので、
損切りとともに利確の水準に関する情報を与えてくれるATRは、実践でも十分に使用することができる便利な分析手法です。
まとめ
以上、ATRについてその特徴や注意点などを紹介してきました。
ATR自身は、FXのテクニカル分析としては与えてくれる情報量は多くないため、
他のテクニカル分析と組み合わせて活用し、
補助的に使用するのが一般的です。
ただ、判断が難しいとされる決済注文の水準に関する情報を示してくれる指標なので、
上手に活用することで安定したFXトレードを行うことができるので、
ぜひ活用してみてください。