FXトレードの分析において、アノマリー手法というものがあります。
理屈では説明できないような分析内容ですが、
現実として外国為替相場に影響を及ぼしていることは事実のようです。
この記事ではファンダメンタルズ分析との関連も含め、アノマリー手法について紹介していきます。
アノマリー手法とは?
FXや株式投資の分野で紹介されることの多いアノマリー手法とは、どんな分析手法でしょうか。
近年では、様々な書籍やインターネット上でFXトレードに関する情報が提供されていますが、アノマリー手法を紹介する内容も多く見受けられます。
中には有名で世界的に知られているものもあれば、
マイナーで日本限定のアノマリー分析の内容もあります。
この記事では、
- アノマリー手法とはどんな手法なのか
- どれほどの信ぴょう性がある手法なのか
などに焦点を当てて、解説をしていきます。
理屈では説明できない相場の動き
そもそも「アノマリー」とは、
一定の法則や理論に基づいたときに、
そこから見て異常なことや説明できない事象・物体を指します。
法則や理論からは説明がつかない、逸脱した状態という意味を持っています。
FXにおけるアノマリー分析も、
理屈や一般的な法則では説明出ないような相場の動きを予想した内容になっています。
FXにおけるアノマリー分析とは?
理屈や一般的な法則では説明できない相場の動きの予想・分析
一見すると信ぴょう性がない分析手法のように感じる方も多いかもしれませんが、
過去の相場履歴を見ると、分析内容が当たっている法則も中にはあります。
FXトレードにおける外国為替相場は、
個人投資家や企業、政府などすべての当事者が実施する売買の結果です。
そのため、
理論的に説明できないアノマリー分析といえども、
これを信じてトレードする人が多いのなら分析通りの相場変動が起こる可能性も十分にあります。
代表的なアノマリー分析内容を紹介
アノマリー分析は有名なものからマイナーなものまで含めると、多数存在します。
今回は、その中でも有名で多くの方が知っているアノマリー分析の内容を紹介します。
アノマリー手法のみを頼りにFXトレードを展開することは、
信ぴょう性が低い内容であることからおすすめすることは難しいですが、
特に有名なアノマリー分析内容は、
多少なりとも相場に影響を及ぼしている可能性は十分にあるので、
知っておいて損はないのかもしれません。
大きく分けると下記のように区切れます。
週間・日のアノマリー
時間的に見て長期的か短期的かで分けられる、とも言えます。
その中でもさらに詳細を解説していきます。
季節・月のアノマリー
まず、季節や月によって存在しているアノマリー分析を紹介します。
この季節には一定方向に動きやすい、
この月になると相場が下がるなどの、
該当の季節や該当の月になったら一定の法則があるという分析内容になっています。
過去の相場を見ると、いずれも分析通りの値動きになっている部分も少なからずあるので、知っておいて損はないのかもしれません。
季節や月に関するアノマリー分析は大量に存在しますが、
その中でも特に有名で多くの方が知っている内容を紹介します。
- ウィンターブレイク
- 節分天井・彼岸底
- スーパーボウル理論
- 花見ラリー
- セルインメイ・ハロウィン相場
それぞれ解説していきます。
ウィンターブレイク
ウィンターブレイクとは、
1月の前半から中盤にかけての、冬のアノマリー分析の代表例です。
ウィンターブレイクとは??
1月の前半〜中盤にかけての、冬のアノマリー分析の代表例。
株式に伴ったFX相場の上昇、年末の確定申告の影響で年明けの相場上昇、など
1月の初旬から中旬にかけては株式市場が上昇しやすいことから、
これに株式上昇に伴ってFXの外国為替相場も上昇するという内容になっています。
大口の投資家や機関投資家のトレードにおいて、
毎年年末になると確定申告における税金対策のために、
保有している銘柄やFXポジションのうち損失を含んでいるものを意図的に決済して損失を確定させ、税負担を減らすトレードをするケースが多くなります。
その後、年が明けてから再び投資成果を求めて銘柄を購入してスタートするという流れが多いために、相場が上昇するという考え方になっています。
ウィンターブレイクは、一見すると理にかなってそうな理論ではありますが、
必ず毎年発生するものでもなく、
相場の状況によっては下落をすることもあるので注意しましょう。
節分天井・彼岸底
節分天井・彼岸底は日本のトレーダーの間で有名なアノマリー分析内容です。
2月前半から3月後半にかけてのアノマリー分析で、
2月初旬の節分の時期頃までは、
1月のウィンターブレイクの影響が継続して相場が上昇してくるものの、そこを過ぎてからは反動で相場が下がり、3月下旬の企業決算手中のころまで継続して下落するという考え方です。
節分天井・彼岸底とは??
1月のウィンターブレイクの影響で2月は相場が上昇して高値になるが、
決算などの影響で3月の彼岸頃にかけて下落を続ける
節分天井・彼岸底は、該当期間も長く、
あまり当たらないアノマリー分析と見られています。
およそ2か月間もの期間の中には、
様々なファンダメンタルズ要因も関与し、
相場は上下動を大きく繰り返すことが多いので、
あくまで参考程度にとどめておくことをおすすめするアノマリー分析内容です。
スーパーボウル理論
スーパーボウルとは、アメリカで開催される一大スポーツイベントです。
スーパーボウル理論とは、
スーパーボウルの勝敗によってのアノマリー分析になります。
アメリカンフットボールの最高の大会であるナショナルフットボールリーグにおいて、
ナショナルカンファレンスかアメリカンカンファレンスのどちらが勝つかによって、
相場がどちらに動くのかを予想するという内容です。
ナショナルカンファレンスの勝利=米国株式が上昇
アメリカンカンファレンスの勝利=米国株式が下落
を予想します。
相場に全然関係がなさそうに見えますが、
実はかなりの的中率を誇っているという実績があります。
理由は全然わかりませんが、相場に最も大きな影響を与えるアメリカの有名なアノマリー分析であるためか、世界中でも多くの方が知っているためなのか、
影響を無視することはできません。
花見ラリー
『花見ラリー』とは、
花見の時期である3月中旬から4月上旬にかけてのアノマリー分析で、
日本で有名な内容です。
3月後半から4月上旬にかけては、
配当確定の時期
でもあるため相場が上昇しやすいという考え方です。
花見ラリーとは??
3月後半〜4月上旬(花見の時期)には
企業の決算発表や配当確定の時期により相場が上昇しやすい
日本の企業の多くが決算月を3月に設定していることに影響を受けている分析内容で、
理にかなっていると考えられます。
ただ、もちろん一方向に継続して上昇するというのは相場ではありえず、
必ず上下動を繰り返しながらトレンドを形成するので、
常に花見ラリーのアノマリー分析を信じてトレードを展開することは得策ではありません。
新年度効果
『新年度効果』とは、
4月上旬ごろに見られるアノマリー分析の内容です。
3月末の企業決算処理が終わり円安にぶれやすくなる面、
企業活動における新規投資資金投入による株高の傾向、
アメリカの4月中旬に控える確定申告に備えて節税対策の株売り注文の増加など、
様々な要因が入り組んで相場が形成される時期となっています。
新年度効果とは??
4月上旬頃(新年度)に見られる相場形成
企業決算や株高の傾向、アメリカの確定申告の影響などにより相場が形成される
新年度の時期ということで、外国為替においても関連する要因が多い時期といえます。
その分アノマリー要素も多くなっているので、
上昇か下降か、一概にどちらの方の傾向が強いか判断が難しい時期ともいえます。
セルインメイ・ハロウィン相場
『セルインメイ』とは、アメリカ発祥のアノマリーで、
「Sell in May(5月に売れ)」という意味になります。
これに対となるものに、『ハロウィン相場』があります。
10月終盤頃から相場が戻ってきて再び上昇が起こる可能性が高いことを示したアノマリーです。
大きく一年を半分に分けて相場の分析ができます。
5~10月頃=材料が乏しくなる時期として相場が下がりやすい
11~4月頃=様々な要因により相場が戻り上昇する
というサイクルを繰り返すというものになります。
一年間を二分割してサイクルを見出すという、
かなりおおざっぱな分類ですので、信ぴょう性はあまり高くないと考えられています。
週間・日ごとのアノマリー
続いて、これまで紹介したアノマリーよりも少し期間を短くした、
週間あるいは日のアノマリーを紹介します。
こちらも季節や月で紹介したもののように、
世界的に知名度の高い内容もあれば、
日本限定の内容のものもあります。
- 水曜日のスワップ
- ジブリの法則
- ゴト日
- TOM効果
それぞれ解説していきます。
内容によっては信ぴょう性がありそうなものも含まれていますが、
過去の傾向から述べられているものが多いため、
あくまで参考程度に捉えておくことをおすすめします。
水曜日のスワップ
水曜日のスワップとは、
FXにおけるスワップポイントに関連するアノマリーです。
スワップポイントは通常毎日付与されますが、
マーケットが休場となる土曜・日曜のポイントがカウントされるのが水曜日です。
水曜日のスワップとは?
土日のポイントがカウントされる水曜深夜〜木曜早朝にかけて、
低金利通貨が売られ高金利通貨が変われる相場になりやすい
これは、信ぴょう性が比較的高いアノマリーといえます。
世界的に共通して適用されるスワップポイントですので、
多くのFX参入者が注目する内容といえます。
ジブリの法則
ジブリの法則とは、日本限定のユニークなアノマリーです。
金曜ロードショーという日本の映画番組において、
ジブリ作品が放送された金曜夜から月曜早朝にかけて相場が荒れるというジンクスとなっているという内容です。
「ジブリの呪い」、あるいは「バルス相場」とも呼ばれます。
まったく信ぴょう性がないアノマリーで、根拠などもちろんありません。
ただ、あまりに日本で有名になったことから、
注目度の高いアノマリーとなっています。
ジブリ映画が放送される週は、相場に注意するべきなのかもしれません。
ゴト日
ゴト日とは、5・10・15など5日ごとの節目の日のことを指します。
ゴト日とは?
5・10・15など5日ごとの節目の日のこと
この日には多くの企業が代金決済をまとめて行う傾向がある
ゴト日には多くの企業が各種代金決済をまとめて行う傾向があるため、
最もポピュラーな通貨である
ドルを購入する取引が多くなり、ドル高となりやすいというアノマリーです。
実際にゴト日に代金決済が実行されることが多いのは事実ですので、
注意しておくべきアノマリーといえます。
TOM効果
TOM効果とは、Turn of the Month Effectsの略称で、
月末月初におけるアノマリーです。
TOM効果とは?
月末月初のアノマリー
株式下降:月末、株式上昇:月初が多いので注目されている
株式市場の下降が月末に、上昇が月初に多いということから、
アノマリーとして注目されています。
特別な根拠はありませんが、
事実として実績が残っており、
アメリカの有名なファンドがTOM効果に関するファンド商品を提供したことでも話題になっています。
注目しておくべきアノマリー分析かもしれません。
アノマリー手法に信ぴょう性はある?
アノマリー手法のうち、主だった有名なものをピックアップして紹介しましたが、
これらアノマリー手法はどれくらい信ぴょう性があるものなのでしょうか。
アノマリー分析の中には、実際の為替取引と関連していたり、
スワップポイントと関係があったりして根拠をしっかりと説明できるものもある一方で、
全く根拠が見いだせないジンクス的なものも存在します。
参考程度にとどめるべき内容が多い
結論から言うと、
アノマリー分析の内容をメインでFX取引の判断基準とすることはおすすめできず、
参考程度に考えておいた方がいいと考えられています。
根拠があるものだとしてもその通りに動かないのが外国為替相場ですし、
なおさらただのジンクスの域を出ないアノマリー内容を信じてトレードをすることは好ましくありません。
相場に絶対はありません。
アノマリー分析の内容は参考程度にして、
その都度テクニカル分析などを用いてエントリーのタイミングを計っていくことが一般的な取引の考え方です。
ファンダメンタルズ分析と関連はある?
ただ、アノマリー分析の中にはファンダメンタルズ分析に影響を及ぼしそうな、
関連性の強いものも含まれていることも事実です。
企業の決算情報などはファンダメンタルズ分析の常とう手段である各種経済指数の元データとなるべきものですし、
アノマリーとして定評のある内容はファンダメンタルズ分析の影響を受けて発生しているものも少なくありません。
影響が強そうなアノマリー分析については、
注目をしておいてその結果をトレードの判断基準の一つとして頭にとどめていくのが好ましいのかもしれません。
まとめ
ここまで様々なアノマリー手法について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
アノマリー分析は、
中には信ぴょう性が低くただのジンクスともいうべき根拠のないものも多く存在します。
そのためアノマリー分析をメインにしてFXトレードをすることはおすすめできません。
しかしながら、
世界的に注目されているアノマリー内容の場合は根拠の有無にかかわらず相場に少なからず影響を及ぼす可能性が高いといえます。
FXに関する知識を増やす点において知っておいて損はありませんので、
有名なものから参考程度に覚えていくのが正しいアノマリー分析との付き合い方なのかもしれません。