FXトレードの派生商品の一つに、
ノックアウトオプションがあります。
外国為替相場を使った商品であることは同じですが、
通常トレードとはかなり取引形態が異なります。
この記事ではノックアウトオプションの特徴とメリット、
通常トレードの違いを解説します。
そもそもオプション取引とは?
そもそもオプション取引とはどんなものなのでしょうか。
オプション取引とは、
取引投資商品を買ったり売ったりする「権利」を取引することです。
オプション取引とは?
取引投資商品を買ったり売ったりする「権利」を取引すること
最初に決めた金額で売買することができる権利を取扱う点が特徴
FX以外にも様々な投資商品で採用されている方式で、
株式投資においては広く利用されています。
指定の投資商品を、
最初に決めた金額で売買することができる権利を取り扱う点が特徴です。
また、オプション料と呼ばれる一定の手数料のような費用が発生します。
以下で紹介するノックアウトオプションはオプション取引の1つで、
FXトレードにおいて売買の選択肢の一つとして利用することができます。
同じ市場を使用するという意味では通常の投資方式と似ていますが、
オプション価格の取り扱いや
オプション料の発生など独特な特徴を持っている投資手法です。
ノックアウトオプション取引とは?
では、ノックアウトオプション取引とはどんな投資手法でしょうか。
ノックアウトオプションも
FXだけでなくほかの投資商品でも利用することができる手法です。
ノックアウトオプションを利用した取引は、
損失の金額を完全に限定することができる
という意味で、
リスクを完全にコントロールできるという特徴があります。
通常のFXトレードの場合も、
ロスカットシステムが採用されているため、
損失は基本的に限定されています。
しかし、週末をはさんで大きな事件があった場合など、
急激な相場変動が起こった時は
ロスカットの水準を超えて不利なレートで決済されることがあり、
その場合は追加で負担を強いられることが起こりえます。
その点で、ノックアウトオプション取引は安心して取り組める方式です。
ブル・ベアどちらかの買い注文
FXにおけるノックアウトオプション取引は、
将来に実行される売買のレートをあらかじめ指定して、
その売買を行う権利を取り扱って利益を求める手法となります。
取引及び相場チェックのイメージとしては、
FXにおけるチャートのチェックとそれほど違いはありません。
ただ、ノックアプトオプションの場合は、
『ベア』と呼ばれる相場の下落を予想する権利
のどちらかを購入する手続きを行うことになります。
通常のFXにおける売りから開始する取引のように、
売りポジションを持つという取引は、ノックアウトオプションにはありません。
ブルかベアのどちらかの権利を購入することで、
ノックアウトオプションの取引はスタートします。
ノックアウトオプションの取引方法
ノックアウトオプションの取引方法を紹介します。
ノックアウトオプションの取引は、
- 取り扱い通貨ペアの決定
- 売買のロット数の決定
- 決済レートの決定
など、感覚的にはFXの通常トレードにおける指値注文や逆指値注文、
さらにはそれらを組み合わせたOCO注文やIFO注文などとそれほど違いはないので、
FXの経験者であればそれほど違和感なく取り組みを開始することができます。
ただ、損益の発生する仕組みには若干の違いがあり、
かつノックアウトプレミアムという独特のルールが採用されているので、
しっかりと両者の違いを理解して取り組みましょう。
うまく利用することができれば、
通常のFX取引よりもリスクを限定した取引が可能となります。
ブル・ベアの選択
まず、取引する通貨ペアが上昇するか下落するかを予想し、
ブルかベアのどちらの権利を購入するのかを決めます。
相場の判断は、
FXトレードにおいてもノックアウトオプションにおいても、
様々なテクニカル分析・世界の経済動向・市場の状況
などを勘案して考える必要がある
通常FXでもノックアウトオプションにおいても
相場分析の能力は必要なので、
FX経験者の方がスムーズにノックアウトオプションの取引に臨むことができます。
FXにおけるノックアウトオプションを最大限に生かすためには、
FXそのものの知識を持っておくことは非常に大事なことで、
その分析をもってブルかベアの選択をすることが大事です。
原資産価格、ノックアウト価格
次に、原資産価格の確認及びノックアウト価格の設定です。
原資産価格とは、
FXでいうところの約定レートのことです。
ただ、FXのように指値での注文を出すことはできません。
また、実勢の為替レートと同一ではなく、
数値としての表記もFXのものとは異なります。
例えば、
FXでのUSD/JPY通貨ペア
実勢レート:105.55 の場合・・・
ノックアウトオプション注文画面では
10555.6 などと表記される
一方、ノックアウト価格は、
FXでいうところの損切り目的のストップ注文の相場になります。
FXと違う点としては、
FXのようにスリッページが起こらないもので、
確実に損切りが実行される信頼感のある水準です。
オプション価格の確認と内訳
ノックアウト価格を設定しようとすると、
注文画面にはオプション価格、あるいはオプション単価が表示されます。
FX会社側が自動的に算出される項目なので、
入力することなどは必要ありません。
ノックアウト単価は以下のような計算式で算出されます。
原資産価格ーノックアウト価格+ノックアウトプレミアム
要するに、FXで言い換えると、
約定価格と損切りレートの差に、
ノックアウトプレミアムと呼ばれる負担額を加えたものがオプション単価となります。
ノックアウトプレミアムは、
スリッページが起こらないようにするための保証金としての意味合いがあります。
注文画面では、オプション価格あるいはオプション単価としか表記されていませんが、
以上のような内訳が存在しています。
ノックアウトプレミアムの返金条件
オプション価格の内訳で、
ノックアウトプレミアムとは、スリッページが起こらないようにするために支払う保証金としての意味合いがあることは前述のとおりです。
ノックアウトプレミアムは、
一定の条件によっては返金を受けることになります。
すなわち、
ノックアウト価格に達する前に自らポジションを決済=返金
を受けることになります。
FXの場合は証拠金取引であるため、
エントリーと決済時のレートの差額決済をすることで精算となりますが、
ノックアウトオプションの場合はあらかじめノックアウト価格を支払ってトレードが開始となります。
FXとの大きな違いと言える部分です。
ロット数、決済レートの決定
オプション価格を確認したら、
最後に取引をするロット数と決済のレートを決めます。
ロット数は、FX同様会社によって最小単位が決まっているので注意しましょう。
最小ロットが1万通貨のFX会社が多いので、
数値が低いからと言って取引額が少ないということにはなりません。
決済レートは、指値と逆指値の設定となります。
FXトレードの場合では、
決済するレート自体を設定するのに対し、
ノックアウトオプションでは原資産価格からどれくらい乖離した段階で決済するのかを設定する形になります。
指値及び逆指値で決済をした場合は、
既に支払ったオプション価格のうち、
ノックアウトプレミアムの部分が返金される仕組みになっています。
ノックアウトオプションの取引例
ノックアウトオプションの取引を、具体的な数値を例示して説明します。
USD/JPYの通貨ペアを利用して取引をすると仮定します。
原資産価格が10550の時に
ノックアウト価格を10530とした場合、
オプション単価は10550-10530=20
にオプションプレミアムを加えた数値となります。
オプションプレミアムが2だったとすると、
22がオプション単価として算出されます。
例)
通貨ペア:USD/JPY
原資産価格:10550
ノックアウト価格:10530
【オプション単価計算方法】
(原資産価格ーノックアウト価格)
(10550ー10530)= 20
オプション単価:20
【オプションプレミアム】
オプションプレミアム:2 の場合・・・
(20+2)= 22
オプション単価:22
オプション料は、
オプション単価にポイントと呼ばれる数値を乗じて算出されます。
ポイントは、FX会社によって異なる。
1ロット=100ポイントであることが多い。
すなわち、この事例においては、
オプション料は20×100=2,000円という結果になります。
2,000円を支払って、1万通貨のトレードができるということで、
非常に資産効率が良いことがわかります。
FX通常トレードとノックアウトオプションとの違い
通常のFXトレードと、ノックアウトオプションには、
どんな違いがあるのでしょうか。
どちらが優れているのか、利用しやすいのか、
という評価は、人それぞれ好みや能力、判断力に差があるので、
一概に決めることはできませんが、
双方の特徴とメリット、デメリットをしっかりと理解して、
どちらが自分に向いているのかを考えて取引をすることをおすすめします。
普段FXの通常トレードをしている方にとっては、
ノックアウトオプションはそれほど違和感なく取り組むことができると
いわれることが多いので、
ぜひ両方の特徴をつかんで比較しながら活用してみてください。
資産効率が良い
通常のFXトレードとノックアウトオプションの違いの1つ目は、
資産効率の面での違いです。
通常のFXも、
レバレッジを活かしたトレードは非常に資産効率が良いことで人気がありますが、
使い方次第ではノックアウトオプションの方が
さらに効率よく資産を活用することが可能です。
例えば、
上記の例で、USD/JPYの1万通貨単位の取引を考えると、
FXの場合・・・
一般的に4万円以上の証拠金を投入する必要がある
ノックアウトオプションの場合・・・
上記の例の通り2,000円で取引が可能
ノックアウトオプションは、非常に資産効率が良いといえます。
スプレッドが広い
通常のFXトレードとノックアウトオプションの違いの2つ目は、
ノックアウトオプションの方がスプレッドの幅が広いという点が挙げられます。
近年、多くのFX会社では非常にスプレッドを狭く設定して、
セールスポイントとしています。
非常に狭いスプレッド設定に比べれば、
ノックアウトオプションはスプレッドを広く設定されることが多いです。
ノックアウトオプションのデメリットの部分と言える要素で、
繰り返し取引をする方にとっては、
スプレッドは重要な要素となるので、
FXの通常トレードの方が適していると判断するのも納得がいきます。
損切りレートを広くできない
通常のFXトレードとノックアウトオプションの違いの3つ目は、
損切りレートをコントロールすることができるかどうか、という点が挙げられます。
通常のFXトレードの場合・・・
自由に損切りレートを変更できる
ノックアウトオプションの場合・・・
最初に決めた逆指値設定およびノックアウト価格は変更できない
仕様になっています。
どちらの方にメリットがあるのか判断が難しいところですが、
FX初心者の場合は、
損を発生させることに抵抗を感じ、
最初に決めた損切り水準を変えてしまうケースが多くあります。
損切りに慣れていない初心者にとっては、
自由に損切りレートを変えられないノックアウトオプションの取引は安心感があり、
想定以上の損失を計上しなくて済むというのは大きなメリットとなるかもしれません。
スリッページがない
通常のFXトレードとノックアウトオプションの違いの4つ目は、
スリッページの有無が挙げられます。
スリッページとは?
急激な相場変動が起こった際などに、
指定した約定価格を超えて決済がなされてしまうこと
特にロスカットの段階でスリッページが発生してしまった場合、
証拠金以上の損失を計上してしまう恐れのある現象です。
通常のFXトレードの場合はスリッページが起こる可能性があるため、
想定とは異なるレートでエントリーや決済が発生してしまう可能性があります。
一方、ノックアウトオプションの場合は
スリッページが絶対に起こらない仕組みになっています。
ノックアウトプレミアムを支払っているメリットがここにあります。
ノックアウトオプションの方が
損失を完全に限定できるので安心して取引に臨むことができるのは大きなメリットです。
まとめ
以上、通常のFXトレードとノックアウトオプションとの違いについて紹介をしました。
ノックアウトオプションは、
損失額が確実に限定されることや、
資産効率が非常に良いなどの大きなメリットがあります。
ただ、FXに比べてスプレッドが広くなってしまうなどのデメリットもあるので、
メリットとデメリットを含めた特徴をしっかりと捉え、
自分に合っているのはどちらなのかよく考えて取引を展開することをおすすめします。