移動平均線が一定期間の価格を平均したものというのは知ってるけど、そこから何がわかるのだろうかと悩んだことはないでしょうか。
初心者の中には、どのようなパラメーターを設定すればいいのかわからない方も多いのではないかと思います。『移動平均線』は最もポピュラーでシンプルな分析方法なので、多くの方が愛用しており初心者にもオススメです。
この記事では、以下について解説していきます。
- 移動平均線とは何か
- 移動平均線に使われる期間や本数
- 移動平均線にはどんな種類があるのか
- チャートに移動平均線を表示させる方法
- 価格と移動平均線の位置関係
- 移動平均線の傾きと価格の関係
- 移動平均線を使った売買ポイントの見つけ方
この記事を読めば、移動平均線とは何か、どのように活用すれば相場を読み解くことができるようになるのかがわかるので、ぜひ最後までご覧ください。
移動平均線とは?
『移動平均線』は、テクニカル分析の中で最も代表的なインジケーターのひとつです。
一定期間の価格の終値の平均値をグラフ化し、おおまかなトレンドを探るのに役立つ非常に重要な指標です。
期間などのパラメーターを変更したり、移動平均線の種類を変えることでさまざまな角度からの分析が可能になります。
『移動平均線』とは、トレンドを探るのに役立つ指標!
- テクニカル分析の中で代表的なインジケーター
- 一定期間の価格終値平均値をグラフ化
- パラメーターや種類を変えることで、様々な角度から分析できる
移動平均線の期間・本数
通常、移動平均線は、1本だけではなく期間の違う複数の線の組み合わせで相場の方向性や売買のポイントを分析します。
一般的によく用いられる期間は、5、10、13、20、21、25、50、75、90、200などです。また、本数は短期、中期、長期の3本を設定することが多いです。
何日の移動平均線を使う?
期間や本数に決まりはないので、いろいろ試して自分が使いやすい設定を見つけるのが一番です。とはいえ最初はわからないと思うので、日足の場合は短期に5日、中期に20日、長期に75日を使うといいでしょう。
5日というのは営業日ベースで1週間となり、5日移動平均線は1週間のマーケット全体の売買の平均コストをあらわしています。同様に、20日というのは営業日ベースで1ヶ月となり、20日移動平均線は1ヶ月のマーケット全体の売買の平均コストをあらわしています。さらに、75日というのは営業日ベースで3ヶ月となり、75日移動平均線は3ヶ月のマーケット全体の売買の平均コストをあらわしています。
5日=1週間 の売買平均コスト
20日=1ヶ月 の売買平均コスト
75日=3ヶ月 の売買平均コスト
移動平均線の種類
移動平均線は平均化させる計算式の違いによって、3つの種類に分けられます。
- 単純移動平均線(SMA)
- 指数平滑移動平均線(EMA)
- 加重移動平均線(WMA)
単純移動平均線(SMA)
一定期間の終値の合計を、その期間で割って算出する最もシンプルな移動平均線です。
たとえば、5日移動平均線であれば5日間の終値を合計して単純に5で割ります。
指数平滑移動平均線(EMA)
MACDでも使われている移動平均線で、直近の数値をより重視した移動平均線です。
【平均値の求め方】
n日間の指数平滑移動平均
1日目=(当日も含め)n日間の終値の平均
2日目以降=前日の指数平滑移動平均+α×{当日終値-前日の指数平滑移動平均}
※α(平滑定数)=2÷(n+1)
単純移動平均線に比べると相場の変化に素早く反応しますが、単純移動平均線に比べるとダマシも多くなるので注意が必要です。
加重移動平均線(WMA)
直近の価格に近いものほど重要度を大きくした移動平均線です。
【平均値の求め方】
[(当日の終値×n)+{前日の終値×(n-1)}+{前々日の終値×(n-2)}+・・・・・+{(n-2)日前の終値×2}+(n-1)日前の終値]
÷{(n+(n-1)+(n-2)+・・・+2+1)}
※ n:対象期間
現在の価格に近くなるほど比重が高くなるのでEMAよりもなだらかで、トレンド発生時には価格に一番近い水準で推移するため、レジスタンスやサポートとなることも多いです。
MT4で移動平均線を表示する方法
移動平均線は人気のあるトレンド系のインジケーターで、MT4にも標準で内蔵されています。MT4で移動平均を表示させるには次の手順で行います。
① メニューバーの「挿入」→「インディケーター」→「トレンド」→「Moving Average」の順にクリックします。
② パラメーターの設定画面が出てきます。
③ 期間、移動平均線の種類、色や線の太さなどのスタイルを設定して、OKボタンを押します。
④ そうすると、指定したパラメーターの移動平均線がローソク足の上に表示されます。
⑤ パラメーターの設定を変えて①~③を繰り返すことで、複数の移動平均線を同じチャート上に表示することができます。
Trading Viewで移動平均線を表示する方法
Trading Viewでも同様に移動平均線は内蔵されています。Trading Viewで移動平均線を表示するには次の手順で行います。
① 「インジケーター&ストラテジー(fx)」→「内臓」→「MA(移動平均)」をクリックする。
② 選択した移動平均線がローソク足の中に表示されます。
※単純移動平均線以外にも内蔵されている移動平均線はあるので、検索欄に「移動平均」と入力すれば移動平均線関連の一覧の中から選ぶことができます。
③ 表示された移動平均線のパラメーターを変更するには、インジケーター名の右横にある設定ボタンをクリックします。
④ 現在設定されている数値や色が表示されるので、自分の好みの期間や色に設定してください。
⑤ ①~④を繰り返すことで、複数の移動平均線を同じチャート上に表示することができます。
移動平均線の基本的な3つの見方
移動平均線を見ると、現在の相場がどのようなトレンドにあるかを知ることができます。
そこで、移動平均線を分析するときの3つの基本的な見方について解説します。
移動平均線と価格との位置関係
移動平均線は、その期間のマーケット全体の売り買いの平均コストをあらわしています。
つまり、移動平均線を見れば市場参加者全員の売り買いの平均コストが見えてくるのです。
たとえば、現在の価格が移動平均線より上にあれば、買いポジションを持っている人は評価益を持っていて、売りポジションを持っている人は評価損を抱えていることがわかります。
この後さらに価格が上昇した場合、売り方のロスカットの買い注文が入り、買いトレンドが形成されることもあります。
逆に、現在の価格が移動平均線よりも下にある場合は、買い方が評価損を抱え、売り方は評価益を抱えていることになり、売り方有利の状況になれば売りトレンドが形成されます。
このように、価格が移動平均線の上にある時は上昇基調にあり、価格が移動平均線のしたにある時は下降基調にあると言えます。
移動平均線の傾き
移動平均線の傾きで、現在のトレンドがどの方向にあるのかをチェックすることができます。移動平均線が上向いている場合は上昇トレンド、下向きの場合は下降トレンド、傾きがない場合はレンジ相場と判断できます。
移動平均線と価格の乖離率
価格は移動平均線との乖離が大きくなりすぎると、やがて移動平均線に向かって近づいていく傾向にあります。そのため、価格と移動平均線のマイナス乖離が大きくなれば割安感から買いが入り、逆にプラス乖離が大きくなれば割高感から売りが入る傾向にあります。
売買判断
移動平均線を使った具体的な売買判断としては、「グランビルの法則」や「ゴールデンクロス・デッドクロス」が有名です。
グランビルの法則
グランビルの法則 = 移動平均線から買・売ポイントを見つける手法
グランビルの法則とは、価格と移動平均線との位置関係に着目した分析方法です。
売り買いのポイントは次の8つの段階に分類されます。
- 移動平均線が横ばい~上向き始め、終値が移動平均線を上抜いた時
- 移動平均線が上昇時、終値が移動平均線を下回り、再度上抜き=押し目買いポイント
- 終値が上昇している移動平均線より上、移動平均線に近くまで下落したが、タッチせず再上昇に転じた時
- 終値が下降し始めた移動平均線を下回り大きく乖離=リバウンド狙いポイント
- 移動平均線が横ばい~下向き始め、終値が移動平均線を下抜いた時
- 移動平均線が下降時、終値が移動平均線を上回り再度下抜き=戻り売りポイント
- 終値が下降している移動平均線より下、移動平均線に近くまで上昇したが、タッチせず再下降に転じた時
- 終値が上昇し始めた移動平均線を上回り大きく乖離=リバウンド狙いポイント
ゴールデンクロスとデッドクロス
短期の移動平均線と中長期の移動平均線の位置関係をもとにトレンド転換を判断する方法があります。
短期線が中期線を下から上に上抜けた時をゴールデンクロスと言い、買いサインとなります。逆に、短期線が中期線を上から下に下抜けた時をデッドクロスと言い、売りサインとなります。
ゴールデンクロス = 短期戦が中期戦を、下→上に抜けた時
デッドクロス = 短期戦が中期戦を、上→下に抜けた時
ただし、この時の中期線の向きにも注意が必要です。
中期線が上向く前のゴールデンクロスや、中期線が下向く前のデッドクロスはダマシが多く、トレンド転換にはつながらないことも多いからです。
3つの移動平均線を使った分析方法
短期・中期・長期の3つの移動平均線の傾きや位置関係をチェックすることで、相場の状態やトレンドの発生を判断することができます。
3本の移動平均線が短期>中期>長期の順に並んでいる時は本格的な上昇トレンドが発生し、逆に長期>中期>短期の順に並んでいる時は本格的な下降トレンドが発生している状況です。
これらはパーフェクトオーダーと呼ばれ、売買ポイントを探すうえで重要な要素となります。
マルチタイムフレーム(MTF)を使った分析方法
長期の時間足は、短期の時間足の集合体です。
たとえば、1時間のローソク足は30分足の2本分であり、15分足の4本分です。つまり、上位足を見て長期的な相場の方向性を把握し、下位足が同じ方向を向いている時にトレードするのが勝率を上げることにつながります。
MT4では時間軸の異なる移動平均線を同じチャート上に表示することができるので、マルチタイムフレーム分析をするうえで役立ちます。
MT4でマルチタイムフレームの移動平均線を表示させる方法は次のとおりです。
① ターミナルのライブラリタブから「Multi TimeFrame MovingAverages」をチャート上にドラッグ&ドロップします。
② MT4を再起動すると、ナビゲーターのDownloadsフォルダの中に「MultiTimeFrameMovingAverages」や「mtf-ma」などの名前のファイルが作成されているので、チャート上にドラッグ&ドロップします。
③ するとパラメーターの入力画面が表示されるので、必要な項目を入力します。下の図では30分足のチャートに1時間足と4時間足の20 EMAを追加しています。
移動平均線のウィークポイント
相場は一度トレンドが発生すると長く継続する傾向があります。そのため、移動平均線はトレンド発生を知るためのテクニカル指標としては大変有効です。
しかし、常にトレンドが長く続く保証はどこにもありません。移動平均線は「後追い」の指標であるという性質から、あくまでもトレンドをフォローするものであって、将来の価格を予測するものではないということを忘れてはいけません。
また、トレンドが発生している時にはサポートやレジストとしての機能も良好に働きますが、レンジ相場ではローソク足が移動平均線に絡み合うような感じとなり機能しません。
移動平均線を使って相場のトレンドを探ろう
ここまで移動平均線について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
- 移動平均線は、一定期間における終値の平均値を線でつなげたもの
- 移動平均線は期間の違う複数の線の組み合わせで相場の方向性や売買のポイントを分析する
- 移動平均線には、単純移動平均線や指数平滑移動平均線、加重移動平均線などがある
- 移動平均線はMT4にもTrading Viewにも標準で内蔵されているので簡単に表示できる
- 価格が移動平均線の上にあれば上昇基調、下にあれば下降基調である
- 移動平均線の傾きを見ることで、おおまかなトレンドを判断することができる
- 価格は移動平均線から大きく乖離すると、移動平均線に向かって収束する傾向が強い
- グランビルの法則を使って、価格と移動平均線の関係から8つの売買ポイントを見出せる
- 短期線と中期線が交わるゴールデンクロス、デッドクロスは重要な売買ポイントである
- チャート分析をする場合、上位足の分析を行った後に下位足の分析をすることが勝率を上げるためのコツである
移動平均線は、トレンドが発生する時やトレンドが継続している時には有効なシグナルを見つけやすい指標で、多くのトレーダーが使っています。
特に長期の移動平均線は、現在のマーケットの状況が「トレンド形成中なのか」「トレンドが終了したのか」「トレンドが発生したのか」を予測するのに適しています。
また、短基線や中期線との関係などから売買ポイントを見つけやすいという特徴もあります。さらには、移動平均線自体がサポートやレジスタンスとしての機能も果たします。
移動平均線の基本をしっかりと押さえることでおおまかなトレンドを把握することができ、売買ポイントを見つけ出すことができます。
FXでは、トレンドがどちらに向かっているかがわからなければ大損につながります。まずは移動平均線を使ったチャート分析で、相場のトレンドを探れるようになりましょう。