FXには、強制ロスカットという制度があります。
証拠金が一気に損なわれるトレーダーにすれば恐怖の制度です。
強制ロスカットを回避するためのポイントとはどんなものがあるでしょうか。
この記事では、
海外FX会社の制度との対比も含め、強制ロスカットについて解説をしていきます。
強制ロスカットとは?
強制ロスカットは、
FXトレーダーが最も恐れる制度で、一気に証拠金の損失が確定してしまう制度です。
強制ロスカットとは?
あらかじめ定められた証拠金維持率に到達したら
即座に証拠金の損失が確定してしまう制度
FXにおいてポジションを保有していると、
実勢相場の変動により含み損益が起こりますが、
ポジションを維持する必要証拠金に対して一定の額の含み損が累積されてしまうと、強制ロスカットが実行されます。
保有ポジションにかかる通貨ペアの相場動向は
常にチェックをしておかないと、思わぬ損失を被るおそれがある
FXを利用するにあたり最もリスクとなる強制ロスカットの仕組みをしっかりと理解して、想定外の損失を被らないように注意してトレードに臨みましょう。
強制ロスカットの仕組みや回避するためのポイントなどを紹介していきます。
投資家保護が主たる目的
そもそも、強制ロスカットという制度はどんな目的で導入されたものなのでしょうか。
損失を確定させる制度がなぜ導入されているのかと疑問に思う方も多いかもしれません。
強制ロスカットは、
そもそもFXを利用して資産運用をする投資家の保護を主たる目的にした制度とされています。
強制ロスカット
=FXを利用して資産運用をする投資家の保護を目的にした制度
外国為替相場は常に変動しており、
相場の状況によっては保有するポジションに大きな損失が蓄積されていってしまうこともあり得ます。
どこかの時点で損失を決めてしまわないと、
際限なく損失が累積されていってしまう恐れがあり、非常に危険です。
投資家の資産を最低限のところで保護するということを目的にして始められた制度であることを理解しておきましょう。
もし強制ロスカット制度がなかったらどうなるか
FXトレーダーにとって強制ロスカットは恐怖の制度ととらえられることが多いですが、
投資家保護という主たる目的で導入されています。
もし仮に、強制ロスカットの制度がなかったとしたらどうなるでしょうか。
相場の変動によっては、際限なく損失が拡大
→証拠金が完全になくなるだけでなく
最終的にさらにマイナスが積みあがってしまう
FXで投資をして儲けようと思って始めたものの、
負担が大幅に積みあがっていく恐れがあります。
強制ロスカットの制度があるおかげで、
どんなに相場の変動が悪い方向に行ったとしても、
損失が一定の時点で確定してそれ以上の損失を積み重ねてしまう恐れはなくなる
→投資家保護の目的通りの働き
強制ロスカットは損失が確定してしまう恐ろしい制度ですが、
非常に重要な役割を担っているといえます。
会社によって執行の証拠金維持率は異なる
強制ロスカットは、
ポジションを保有するのに必要な証拠金と含み損益を加味した実質の資産価値との割合である証拠金維持率が一定の水準を下回ると実行される制度です。
ある会社では50%と設定している一方で、
別の会社では70%としているところもあります。
海外FX会社では、0%としているケースも結構見受けられます。
低いとロスカットが起こりにくいのでいいのではないかと考える方が多いかもしれませんが、
低いほうがいいのか高いほうがいいのかというのは一概に決めることはできません。
早めにロスカットの執行をしたほうが損失の拡大を早目に防げるという考え方も、
維持率を低めにすると相場が反転してロスカットを防げる可能性があるので良いという考え方も、どちらが良いかは自分と照らし合わせて決めるのが良いでしょう。
急激な相場変動による追証に注意
強制ロスカットは、あらかじめ定められた証拠金維持率に到達したら、
即座に執行される制度ですので、
一般的には想定される金額以上の損失は発生しないのが通常です。
しかし、
週末をはさんで大きな事件があったときなどの急激な相場変動が起こった際には、
証拠金維持率を大きく下回ってからロスカットが執行されるケースもあり得ます。
場合によっては、投入した証拠金以上の損失を発生させる相場でロスカットが執行されるケースもまれにですがあり得ることです。
この場合、
証拠金をすべて失っても補えない損失は追加で資金を投入しないといけなくなります。
これを『追証』といい、FXにおける大きなリスクと考えられています。
証拠金維持率の計算方法
ロスカットを起こさないために自身の資金管理をすることは、
長期的にFXの投資を楽しむために非常に重要なことです。
そのためには、強制ロスカット執行の判定の根拠となる証拠金維持率の計算方法を知っておいたほうがよいです。
証拠金維持率の計算方法は、以下のようになっています。
証拠金維持率=純資産÷必要証拠金×100(%)
例えば、20万円の資金を証拠金として投入して、
10万円の証拠金が必要なUSD/JPYの通貨ペアの買いポジションを100円のレートで1万通貨単位保有したとします。
ポジション保有時点では、20÷10×100=200%の証拠金維持率となります。
その後相場が変動し95円になったとすると、
証拠金維持率は(20-5×1)÷10=150%となります。
純資産は含み損益を加味して計算されるため、
相場が動くことで証拠金維持率も伴って変動することになります。
強制ロスカットを起こさないために
ここまで紹介してきたように、
強制ロスカットは想定以上の損失を発生させないという意味で非常に重要な制度であることは間違いありませんが、
やはり投資家の立場からすると、是が非でも避けたいと考えるのが一般的です。
投入した資金が一瞬で損なわれてしまうのは、
やはり金銭的にも精神的にも負担が大きくなります。
強制ロスカットを発生させないために気をつけるべきポイントを紹介していきます。
- 余裕のある証拠金を用意
- 無理なレバレッジをかけた取引を行なわない
- 週末にポジションを持ち越さない
- 損切りを早めにする
- ロスカットが起こる相場の目安を計算しておく
ぜひ、実際のトレードに生かして、
リスクを制限しながら長期的にFXの投資を楽しめるように対処していきましょう。
余裕のある証拠金を用意
強制ロスカットは、純資産額が少ないと発生しやすくなります。
証拠金としてつぎ込む資金に余裕を持たせておくことが
単純で簡単なロスカット回避の方法です。
あらかじめ豊富に証拠金をつぎ込んでおけば、
ロスカットが起こる心配も少なくなります。
ただ、証拠金を増やす取引で最も悪い例が、
保有するポジションにかかる相場がどんどん悪くなっていき含み損失が積みあがっている中、ロスカット発生を防ぐために仕方なく証拠金をつぎ込んでいく手法です。
ロスカットを防ぐために追加で証拠金を入れていき、
その場しのぎのようにロスカットを避ける方法はおすすめできません。
際限なく損失が拡大していく恐れがあるため、
早目にポジションのクローズを検討するほうが負担を限定できます。
無理なレバレッジをかけた取引を行なわない
FXの醍醐味であり魅力といえば、レバレッジを活用した効率の良い投資です。
しかし、
めいっぱいレバレッジをかけての高額取引は、ロスカット発生リスクが高くなります。
投入した証拠金で最大限にレバレッジをかけて高額のトレードをする方もいますが、
少しの相場の反転で一気にロスカットが起こってしまう可能性があるトレード手法と言えます。
大きな利益を狙うために、
高いレバレッジをかけてめいっぱいの取引をするのも一つの戦略ですが、
信ぴょう性のある予測ができた時のようなケースを除けば、
めいっぱいレバレッジをかけてトレードをすることは、
強制ロスカットの発生リスクが高くなるため、おすすめできません。
週末にポジションを持ち越さない
FXトレードは、世界のどこかの市場がオープンしていれば取引をすることが可能です。
しかし、土曜及び日曜は世界中の市場がクローズするためトレードをすることはできません。
FXトレードができない土曜や日曜の間に外国為替相場の変動に重要な影響を与えるような事件があった時、
週明けの月曜朝一の相場変動は大いに荒れるケースがあります。
場合によっては一時的に急激な相場変動が発生し、
ロスカットの水準にまで相場が変動するケースは意外にあります。
土曜日曜の期間で相場に影響を大きく及ぼすような事件があると相場は急速に変動してしまうので、週末でポジションを持ち翌週に持ち越すことは極力避けるほうが無難と言えます。
損切りを早めにする
強制ロスカットが起こる要因として、
保有するポジションにかかる含み損失が積みあがることが挙げられます。
損失が膨らんできても、
いずれ相場が反転して損失が解消されるという希望的観測でもってポジションを保有し続けることは、FXトレードにおいては望ましくありません。
いわゆる「塩漬け」という状態で、他のトレードにも臨むことができず、
機会損失にもつながります。
エントリー時に想定した相場の変動の方向とは明らかに反対の方向に動いた時には、
早目に損切り決済をすることが、強制ロスカットの発生を防ぐ対策となります。
特にFX初心者にとっては損切りをすることに抵抗を感じるケースもありますが、
早目に決断をすることで損失の拡大を防げるので、
早目に損切りをすることも非常に重要なことです。
ロスカットが起こる相場の目安を計算しておく
FXにおけるロスカット発生を防ぐ資金管理をするうえで、
どれくらいの相場変動が起こったらロスカットの発生が起こるのか、
その目安をつかんでおくことはとても重要です。
FX会社それぞれが定めている証拠金維持率に達する場合の相場が
どれくらいかを先に逆算して把握しておくと、
どれくらい余裕があるのかを把握しながらトレードをすることができるので、
心理的な余裕にもつながるのでおすすめです。
保有するポジションの通貨ペアが複数ある時は、
計算が複雑になってしまい産出が難しいですが、
単一の種類の通貨ペアを保有している際には簡単にロスカットに達する相場の水準を算出することができるので、ぜひ実践してみてください。
海外FX会社のゼロカット制度
強制ロスカットは一定の証拠維持率に達したときに即座に実行されますが、
急激な相場変動が起こった時には、定められた証拠金維持率を超えて決済が実行され、
追証の義務を負ってしまう危険性があることを紹介しました。
この追証は、実は日本国内FX会社を利用したときにおこるもので、
海外FX会社を利用する場合は追証が原則的には発生しません。
海外FX会社で導入されていることが多いゼロカット制度と呼ばれる取り決めのおかげとされています。
負担額が確実に限定される
海外FX会社の多くが採用しているゼロカット制度とは、
急激な相場変動が起こりロスカットの水準を超えて決済がされた場合、
FX会社側:発生する追証にかかる部分の負担
投資家側:負担を強いられることがない
という制度です。
日本国内でゼロカット制度を導入しているケースはなく
海外FX会社の大きな特徴の一つです。
海外FX会社を利用したトレードでは、
日本の国内FX会社では規制を受けていて実行できないレベルのハイレバレッジ取引が可能になっているので、
ハイレバレッジとゼロカット制度を組み合わせてハイリスクの思い切ったトレード展開をするというのも戦略の一つと言えます。
急激な相場変動が起こったとしても、証拠金以上の損失は発生しなくて済むので、
損失額を限定しながらトレードの展開をすることが可能です。
ゼロカット制度を採用しているのは海外FX会社なので、
口座開設をする業者の選定は慎重に行うようにしましょう。
まとめ
以上、強制ロスカットについて紹介をしてきました。
ロスカットは投資家にとっては怖くて恐怖に感じる制度となっていますが、
実際は投資家の損失を限定する重要な取り決めと考えることができます。
ロスカットを発生させないために、注意するべきポイントをしっかりと抑えて、
リスクを限定しながらトレードに臨むようにしましょう。
資金管理としっかりとしたリスクヘッジをすることで、ロスカット発生のリスクは大きく軽減することができます。